2022/11/23
「キックオフ研究会(第1回研究会)」開催報告
●日時:2022年06月11日(土)13:00~15:00
●会場:名古屋大学教育学部棟第1講義室,Zoom ※ハイブリッド形式
●参加者数:対面5名,オンライン17名(合計22名)
●テーマ:今,なぜ比較授業分析か?〜文化基底に基づいた比較授業分析の意義〜
●講演者:サルカール アラニ モハメド レザ(名古屋大学教授)
SIG-02を前身とする「SIG-TL 教師教育・実践研究」のキックオフ研究会を,ハイブリット形式にて2022年06月11日に開催しました.研究会に先立って,坂本將暢SIG-TL代表より,日本教育工学会のSIG活動および本SIGの説明があり,ついで本研究会の講演者であるサルカール・アラニ名古屋大学教授の紹介が行われ,研究会がスタートしました.
研究会は,「今,なぜ比較授業分析か?」をテーマに,アラニ教授らの名古屋大学グループが取り組んでいる比較授業分析とその意義について講演していただきました.講演の要旨は次のとおりです.
・比較授業分析(Designing a cross-cultural analysis)は,異なる社会・文化の「レンズ(lens)」を通してトランスクリプトを基に授業分析を行う方法のことである.
・対象となるデータは,授業の発話記録だけでなく,その授業に関する検討会の音声記録など,研究対象である授業に関する音声記録をできるだけテキスト化したデータ(トランスクリプト)である.
・トランスクリプトによる分析は,観察者が無意識のうちに作っている授業イメージをクリアにし,トランスクリプト上の事実を基に分析・解釈するため,研究として成立させることができる.
・トランスクリプト上の事実を分析・解釈を行う際には,様々なレイヤーから見ることが重要であり,こうした比較授業分析によって「教室文化基底」の解明を行うことができる.
講演の途中には,「なぜ授業研究が世界に広がったのか?」,「授業とは何か?授業は誰のものか?」というアラニ教授の問いについて,参加者が3名程度のグループに分かれて回答を考え,全体で交流する時間が2回設けられました.どちらもシンプルな問いでしたが,シンプルな問いだからこそ,答えを具体化する過程で参加者それぞれが持っている文化などが現れ,副題の「文化基底に基づいた比較授業分析の意義」を,この交流をとおして体験できたように思います.
本研究会では,「『文化』という言葉で逃げると,理論化できない」,つまり「文化」に注目することによって見えてくる「問い」があること,他者のレンズを借りることで授業の本質を捉え直すことができること等を,比較授業分析を用いた研究事例をもとに紹介いただき,上々なキックオフ研究会となりました.この勢いを維持しながら,SIG-TLは夏に勉強会,秋にワークショップ,冬に研究会を開催すべく,現在準備を行っております.日程等が決まりましたら,順次webページ等で告知していきますので,奮ってご参加ください.
文責:今井亜湖(岐阜大学)
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