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旧SIG活動

SIG-09

質的研究(2015~2017年度)

コアメンバー 岸磨貴子(明治大学),杉原真晃(聖心女子大学),久保田賢一(関西大学),
大谷尚(名古屋大学),尾澤重知(早稲田大学),金子大輔(北星学園大学),
山本良太(東京大学),時任隼平(関西学院大学)

 質的研究SIGでは、教授・学習を含む多様な場面におけるプロセスや相互作用に関心を持ち、質的なデータを採取し分析することにより、これらを探求します。たとえば、授業において、普段大人しい児童が積極的に議論に参加する時、そこには「何か」があるわけです。質的研究では、その「何か」を引き起こす構造やプロセスなどをデータをもとに明らかにします。また、教師が、「あること」を経て、これまでの指導方法を見直し、創造的な授業を実践するようになることもあるでしょう。その「何か」や「あること」は、頻繁に起こるものでも、誰にでも起こることでもないかもしれませんし、偶発的なことかもしれません。あるいは、授業者が企図し行った直接的な教授によらないこともあるかもしれません。そのため、教育工学研究で求められる傾向にある「一般性」や「汎用性」から外れてしまい、これまで見逃されがちでした。

 質的研究SIGでは、教授・学習を含む多様な場面やプロセスに焦点を当て、拡大鏡をあてるかのようにして、その特徴的な過程や構造を質的なデータの分析を通して詳細に検討し、分析上の展開につなげ、学習環境のデザイン(活動のデザイン、道具やリソースを含む場のデザイン、共同体のデザインなど)として提案していきます。また、質的研究の適用範囲は非常に広く、インタフェースデザインなどを含むシステム設計や、認知科学的な研究にあるような認知過程、学習過程の解明などを通した基礎理論の構築にも用いられています(たとえば良く知られた「正統的周辺参加論」は、質的研究の成果です)。本SIGでは、「デザイン」だけではなく、現場で起きていることを「解明」したり「理論化」することもめざします。

 質的データの扱いかたは様々です。よく知られているものとして、KJ法やグラウンデッドセオリー、談話分析、ライフストーリー、エスノグラフィー、エスノメソドロジーなどがあります。これらの方法を使うだけではなく、その背景となる認識論・存在論についても、質的SIGを通してみなさんと一緒に学び、議論し、理解を深めていきたいと思います。