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SIG-TL第6回研究会(開催報告)

 SIG-TL第6回研究会「これからの時代における教育工学2025年12月16日(火)17~19時にかけて、オンラインにて、SIG-TL第6回研究会「これからの時代における教育工学的アプローチによる授業研究」が開催されました。当日は、34名のみなさまのご参加を得ることができました。

 本研究会は、SIG-TLの活動が2025年12月で一区切りをむかえることから、企画されたものです。これまでのSIG-02およびTLの取り組みを総括することを通じて、今後、授業研究に対して教育工学はいかにアプローチしうるか、教育工学的アプローチによる授業研究の特徴とはいかなるものか、そこにどのような学問的可能性や課題があるのか、今後の展望も含めて話し合うことをめざして行われました。

 姫野完治氏(北海道教育大学)の話題提供の冒頭では、SIG-02設立時の懐かしい写真が紹介されました。それに続いて、2020年頃を契機とする学校や授業研究の変化について整理がなされるとともに、技術革新によりこれまでの授業研究が直面してきた課題(例えば、逐語記録作成の労力など)が解決しつつある現状が示されました。最後に、これから学校や授業の位置づけがさらに変化すると見込まれる中で、今後の授業研究がどうあるべきか、根本的な問いなおしを含む問題提起がなされました。

 深見俊崇氏(島根大学)からは、コロナ禍と重なった時期のSIG-02の活動についての振りかえりが示されました。続いて、AI時代における教師の資質・能力をめぐる諸外国の議論をふまえ、日本の現状における課題が指摘されました。最後に、これまでの議論を継承し、より一層発展させるために、 研究プロジェクトによる相互の研究交流を促進することや学習機会を創出すること、さらには、教育工学領域における国際的なディスコースとの接合をさらに強化していく必要性が示されました。

 坂本將暢氏(名古屋大学)からは、ここ10年間の『日本教育工学会論文誌』のレビューをもとに、SIG-TLに関連する研究にみられる動向が紹介されました。その結果がふまえつつ、授業研究に関する教育工学的研究の特質として「可視化」「教師の専門知の解明」などが挙げられるという整理がされました。今後の教育・研究課題として、AIの活用が避けられない中で、授業研究や授業分析の熟達者をいかに育てていくかといった点などが挙げられました。

 島田希(大阪公立大学)からは、近接領域において教育工学的アプローチがいかに捉えられているのか、その定義や特徴が示されました。あわせて、近接領域のひとつである教育方法学における近年の議論をふまえ、その共通点と相違点が整理されました。最後に、新たな道具や学びの導入・展開と授業研究手法開発のスピードを保ちつつ、それが一過性のものとならないよう研究を蓄積していく必要性が示されました。

 コメンテーターである前田菜摘氏(大分大学)からは、SIG-02およびTLが取り上げてきた実践事例の「よさ」とはどのようなものか、今後の授業研究に関する教育工学的研究のキーワードになりそうなものがあるかどうか、変化のはやい時代における教職の専門性とはいかなるものかといった問いのほか、授業研究におけるエビデンスやデータとの向き合い方に関して、核心を突くコメントがなされました。

 参加者の方々からは、生成AIが授業研究に与える影響の大きさ、授業研究を通した教師の「観」の変容に関するご意見のほか、個別最適化された学習の核とは何かといったご質問が出されました。限られた時間の意見交換ではありましたが、今後の教育工学的アプローチによる授業研究を考える上で欠かすことができない重要なトピックについて確認することができました。

 最後となりましたが、SIG-02およびTLの活動を応援・参画くださったみなさまに改めてお礼申し上げます。本研究会の最後において、SIG-TLの活動が一区切りをむかえたとしても、今後もさまざまなかたちで研究交流がなされていくことへの願いと期待が共有されました。本日の議論をふまえ、次なる一歩へとつなげていきたいと思います。これまで本当にありがとうございました。

文責:島田希(大阪公立大学)