SIG-ID「第13回定例ゼミ」開催報告

●第13回:2023年6月26日(月)10:00~11:00
●参加者数:6名
●発表者:高橋暁子
●テーマ:問いの役割

文献:Andrew A. Tawfik, Arthur Graesser, Jessica Gatewood & Jaclyn Gishbaugher (2020) Role of questions in inquiry-based instruction: towards a design taxonomy for question-asking and implications for design. Educational Technology Research and Development, 68, 653–678

第13回で取り上げた論文では、探究的な学びを「構造化されていない複雑な事例ベースの問題解決学習」と定義し、アクティブラーニング、ケーススタディ、問題解決学習など様々なアプローチを整理するところから始めています。これらのモデルの共通点は探求活動とリフレクション活動を繰り返すことです。そして、学習者または教授者が生み出した「問い」を追求することで、この反復的で再帰的なプロセスが促進されるとしています。しかし、どのような種類の問いがあるのかは明確でないことから、本研究で「問いの定義と分類」を試みています。最終的に、本研究では3つのカテゴリ(浅い/単純な問い、テスト用の問い、深い/複雑な問い)に分類された16種類の問いが提案されていました。一方、実際には学習環境内に質問が埋め込まれていることが多い(教授者が学習者に問いを投げかけることが多い)ことも指摘されており、学習者自身が問いを生成することをいかに支援するかが今後の課題であることも述べられていました。「学習者が追求したい質問を入力し、システムが関連するコンテンツや追加の質問に適応するアプローチ」もあり得るということです。これは、現在の生成系AIの急速な普及で多くの人が実感している「いかに適切なプロンプトを作るか」という議論につながっていると感じました。

参加者とのディスカッションでは、本論文で提案された問いを、探究的な学習の中でいつどう使うべきかといった議論がありました。本論文ではそこまでは提案されていないので今後の研究課題だと思われますが、「発問」や「Driving Question」といった研究キーワードに関連しそうです。私自身も、自分の授業実践の中でこれまで以上に「問い」について考えていきたいと思いました。

文責:高橋暁子(千葉工業大学)


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