日本教育工学会2025年春季全国大会(第46回)の報告

日本教育工学会 2025年春季全国大会(第46回)の報告
                   大会企画委員会副委員長 瀬戸崎典夫(長崎大学)

 日本教育工学会2025年春季全国大会(第46回)は,2025年3月8日(土)〜9日(日)の2日間にわたり,成城大学で開催されました.

 本大会の運営をお引き受けくださった成城大学の杉本義行大会実行委員長,勝又あずさ実行副委員長をはじめ,大会実行委員会の先生方の多大なるご協力を賜り,無事に会期を終えることができました.この紙面をお借りして,あらためて厚く御礼を申し上げます.

 春期全国大会は口頭発表を主な発表形態としており,International Sessionと学生セッションを含む347件の一般研究発表が行われました.それに加えて,チュートリアルセッション,4件の自主企画セッション,5件のSIGセッション,「情報教育部会」,「学習環境部会」,「学習評価部会」,「先端科学技術とELSI部会」の部会による4件の重点活動領域セッションが行われ,2日間で918名の方にご参加いただきました.

 また,学生による優れた研究とその成果の発表を奨励することを目的とした,「学生セッション優秀発表賞」が設定されており,8名の学生セッションでの発表者に対して,大会企画委員会から賞が授与されました.受賞された皆様,おめでとうございます.

 改めまして,ご発表いただいた会員の皆様,協賛くださった,企業の皆様に感謝の意を表したく存じます.

 次回2025年秋季全国大会は2025年9月27日(土)〜28日(日)にウインクあいち(名古屋)で,2026年春季全国大会は2026年3月7日(土)〜8日(日)に山梨大学で開催されます.大会企画委員会では,参加者の皆様の研究・実践の発表の場となると同時に,会員の皆様の交流を深める場にもなることを目指し,よりよい大会運営を目指して参ります.是非,引き続きご参加くださいますよう,よろしくお願いいたします.

日本教育工学会 2025年春季全国大会(第46回)の御礼
                     大会実行委員会委員長 杉本義行(成城大学)

 日本教育工学会2025年春季全国大会は、2025年3月8日(土)・9日(日)の2日間にわたり、成城大学を会場として開催されました。初日の夜から雪がちらつき、2日目の開催が危ぶまれましたが、交通機関への影響もなく、918名もの参加をいただき、滞りなく全日程を終えることができました。この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。

 成城大学を擁する成城学園は、ワンキャンパスに幼稚園から大学・大学院までを有する、全国的にも稀有な教育環境なのではと思います。今回、この立地を生かした学園ならではの取り組みとして、大会初日の午後に開催校企画セッション「学園各校をめぐるウォーキングツアー」を実施いたしました。定員40名と小規模ではありましたが、山内祐平新会長にもご参加いただき、参加者の皆さまからは好評を博しました。

 ツアーでは、中学・高校舎で在校生が説明役を務め、参加者からお褒めの言葉を頂戴したと聞いております。また、108年におよぶ学園の歴史を紹介する歴史資料館や、卒業生のコレクションによる世界的にも珍しい恐竜化石の展示を行う「恐竜・化石ギャラリー」も多数ご来場いただき、成城学園の特色を感じていただけたのではと思います。

 大会では、一般研究発表セッション(うち一部はオンライン形式)に加え、自主企画セッション、重点活動領域セッション、SIGセッション、チュートリアルセッションなど、多彩なプログラムが展開されました。研究発表は360件にのぼり、最新の研究成果や現場での実践的な知見が共有され、活発な議論が交わされましたことを大変喜ばしく思っております。

 初日の夕刻には、ウェルカムレセプションを開催いたしました。軽食と飲み物を中心に、会員同士の気軽な交流を目的とし、会費を抑えめに設定したほか、二次会でじっくりと語り合っていただけるような構成といたしました。また、成城ならではの企画として、本学の学生によるアイドルコピーダンスグループ「成城彼女」がパフォーマンスを披露し、若手会員の皆さまのおかげで大いに盛り上がりを見せました。学生たちにとっても貴重な経験となり、感謝申し上げます。ちなみに、ステージ機材を除く照明や音響などの運営は、本学園の教職員が自前の機材で対応し、運営面も「手作り」で支えました。恐縮ながら、こうした姿から成城の底力を改めて実感する機会ともなりました。

 繰り返しとなりますが、懇親会後の雪も大きな混乱を招くことなく、皆さまのご協力により、2日間すべてのスケジュールを無事に終えることができました。大会の成功は、大会企画委員会、大会実行委員会、学会役員、学会事務局の皆さまをはじめ、多くの方々のご支援とご尽力の賜物であり、心より感謝申し上げます。次回大会でも、また皆さまとお目にかかれますことを楽しみにしております。

チュートリアルセッション

 チュートリアルセッションは,「JSETの未来予想図:第9代会長と語る学会のDREAMS」と題して,3月8日(土)9:00〜9:30に開催されました.

 3月に開催される春季全国大会にはJSETへの参加が初めての学生の皆さまが多いことから,「何度でも何度でも」「嬉しい!楽しい!大好き!」と思ってもらえる学会になるように,JSETの紹介や学生に耳寄りの情報を提供することを目的としました.

 セッション冒頭では,西森年寿学会副会長(会員サービス担当;大阪大学)からJSETの概要や今大会の見どころが紹介されました.

 その後,第9代会長の堀田龍也先生(東京学芸大学大学院)に,若手研究者の香西佳美先生(立命館大学)と澁川幸加先生(中央大学)がインタビュー形式でお話を伺いました.インタビューでは,2024年に40周年を迎えたJSETの歩みを振り返りながら,会長任期中の出来事や若手研究者への支援の展望,役員等への過負担の課題などが話題になりました.さらに,学生の論文採録に向けてのスケジュールや,学会が会員や教育工学分野に果たす役割についてもお話しいただきました.香西先生と澁川先生が生き生きと話題を展開され,それに対して堀田先生が優しく丁寧に回答されている姿がとても印象的でした.

 おかげさまで本セッションは過去最多の約180人の方にお集まりいただきました.ご参加いただいた皆さま,本当にありがとうございました.

(文責:古賀竣也,石川奈保子)

重点活動領域セッション

 重点活動領域セッションは,3月9日(日)15:05〜16:30の時間帯で開催されました.第2期の取り組みも終盤に入り,「情報教育部会」「学習環境部会」「学習評価部会」「先端科学技術とELSI部会」の4部会による活動報告やワークショップ等がパラレルで行われました.

 情報教育部会では「児童・生徒の情報活用能力の評価のための尺度の検討」と題して,情報活用能力の位置付けについて共有した上で,開発した児童生徒の情報活用能力の評価のための尺度について報告し,小グループに分かれて活発な議論が行われました.

 学習環境部会では「学習環境デザインプロセスの多様性と共通性の考察」と題して,過去2回のセッションで話題提供いただいた研究者・実践者の学習環境デザインプロセスを整理・分析したものを共有した上で,多様性とその中にある共通性について議論が行われました.

 学習評価部会では「探究学習における学習者中心の評価」と題して,学習者が他の学習者や教師,周囲の環境との相互作用を通して「どんなプロセスで学んだか」や「どのように成長したか」についての学習評価の実現に向けて,登壇者の話題提供をもとに議論が行われました.

 先端科学技術とELSI部会では「教育データの利活用について考える」と題して,教育データに関するアンケート調査報告をした上で,教育データの扱いに関して近い立場の人同士でグループに分かれて意見交換が行われ,今後の教育データ収集の観点が提案されました.

(文責:益川弘如)

学生セッション 

 本大会では,教育工学に関わる若手育成,若手研究の奨励を目的として,学生セッションを実施しました.21セッションにて,計78件の発表が行われ,質疑応答や各セッションでの全体ディスカッションでは,活発な議論が交わされました.

 特に優れた発表に対して授与される「学生セッション優秀発表賞」には,以下の8件の研究発表が選ばれました.受賞者のみなさま,おめでとうございます.

・概念形成に関する統合的モデルの提案
 原田 大希(東京大学大学院)

・学際系学部における課題解決型学習を通じたキャリア構成プロセスに関する考察
 石橋 希,正司 豪,尾澤 重知(早稲田大学)

・小学校高学年リズムダンスにおける動画を組み込んだルーブリック教材の開発と評価 
 羽田野 汐音(上越教育大学),片桐 広太(新潟県燕市立吉田北小学校),榊原 範久(上越教育大学)

・生徒-教師間の関係性知覚への教師の自律性支援の影響 PISA2022の二次分析 
 倉島 七海,後藤 崇志(大阪大学大学院)

・SNSアカウントの複数所有と自己の多元性の関連
 工藤 日南子,小野田 亮介(山梨大学)

・慣性式モーションキャプチャを用いた細胞培養における初学者と熟達者の身体動作の比較分析
 湊 祐太朗(東京理科大学),中村 修也(青山学院大学),櫻井 信豪,古池 謙人,赤倉 貴子(東京理科大学)

・議論を基盤とした学習における議論トピックと学習者の経験や文脈を結び付けるLLMエージェントの検討
 前田 祥,美馬 のゆり(公立はこだて未来大学)

・学習者は学習の負担をどのようにとらえるか コストに対する信念尺度の開発から
 真鍋 一生,中谷 素之(名古屋大学)

 発表者・共著者のみなさま,座長のみなさま,発表を聞きに来てくださったみなさまのご協力のもと,どのセッションも有意義な研究発表・交流の場となりました.ご協力,誠にありがとうございました.

(文責:大﨑理乃,中澤明子)

SIGセッション

 SIGセッションは、3月9日(日)13:30~14:55に開催されました。セッションに先立ち、全体会では重田勝介SIG委員会委員長(北海道大学)より、SIG(Special Interest Group)の位置づけについて説明がありました。SIGは、特定のテーマに関心を持つ会員がグループを形成し、研究会やセミナーなどを通じて年間を通じた活動を行うもので、学会員のコミュニティ形成を支援する場であるとされています。また、会員専用ページからSIGに参加する方法についての案内もなされました。続いて、5つのSIGの関係者による各SIGの簡単な紹介が行われました。

 SIGセッションでは、SIGごとに教室に分かれ、それぞれのテーマに沿った発表や討論が行われました。「SIG-TL 教師教育・実践研究」では、話題提供者として熊本大学の前田康裕先生をお迎えし、「授業改善プロジェクトの概要と効果」についての紹介と、参加者によるグループ対話が行われました。「SIG-ID インストラクショナルデザイン」では、「生成AIとインストラクショナルデザイン」をテーマに、授業デザインにおける生成AI活用の可能性と課題について、実際に生成AIを操作しながら議論が交わされました。「SIG-CL 協調学習・学習科学」では、「学習用ツールとしてのロボットや没入型環境を用いた協調学習:人間と技術の協創や関係性をデザイン」と題し、コロンビア大学教育学大学院ティーチャーズカレッジの大喜多優サンドラ(Sandra Y. Okita)先生による講演と、参加者を交えたQ&Aセッションが行われました。「SIG-SE 特別支援教育」では6つのプロジェクトそれぞれの年間の活動内容と成果を報告し、特別支援教育におけるICT活用に関心のある参加者と議論が交わされました。「SIG-MC マイクロクレデンシャル」では、マイクロクレデンシャルの利用・普及に関する動向や意味的理解、Open Badges 3.0の規格についての講演が行われました。

(文責:重田勝介)