将来を見据え,企画し,実行する新しい委員会活動

日本教育工学会 副会長 美馬のゆり(公立はこだて未来大学)

日本教育工学会ニューズレター NO.250より(2021年11月)

 みなさまこんにちは.戦略・国際担当副会長の美馬のゆりです.堀田龍也会長のもと,副会長が4人体制になり,ニューズレターの巻頭挨拶のリレーが始まりました.総務・広報担当の室田副会長に続く,今回が2回目となります.

 私が担当するのは,重点活動領域委員会と企画戦略国際委員会です.2つとも新たに設置された委員会になります.

 重点活動領域委員会は,本学会における特定の重要なテーマについて研究を進め,全国大会だけはなく,研究会やセミナー等で,年間を通して活動します.SIG(Special Interest Group)が会員からの提案で進める活動であるのに対し,重点領域活動は,学会が時限付きで重点的に進める領域の活動です.新たに始まった活動ですので,その領域をどのように定め,どのように進めていくか,その役割や方法について,予算も含めて検討を進めています.最初に設定する領域は,学会としての意思表示ともなり,特に重要です.

 企画戦略国際委員会は,これまでの国際交流委員会と企画委員会を合わせた役割で,国際的な活動だけでなく,学会活動の企画全般を担っています.国際戦略は,2020年11月に提出された将来構想WGの答申にあったように,グローバル化した社会においてこれからの学会活動でも最も重要な課題の一つです.学会が将来においても発展的かつ安定的な活動を行なっていくために,学会活動の日英二言語化や海外の学会との交流・連携強化を進めていきます.また学会活動全体を強化,活性化するには,学会運営のデータに基づく判断の仕組み作り,会員と学会における双方向の情報チャンネルの整備,多様な収入源の確保など,学会員向けのサービスの質および量の向上が必要です.

 2018年11月に将来構想WGは,鈴木克明会長(当時)から諮問を受け,2020年11月に,答申を提出しました.この諮問の背景には,人口減少社会が到来し,一方で知識基盤社会が進んだことなどが影響して,研究環境も大きく変化し,学会のあり方が問われていることがあります.さらにはオープンサイエンスが進むにつれ,論文誌の購読料の無料化なども広がり,会員からの会費で運営されている学会のあり方の再検討が求められているからでした.

 日本教育工学会では,これまでにもSIGの立ち上げや学会2回化などをはじめとしたさまざまな活動に取り組んできました.さらに2020年初頭から広がったCOVID-19は,初等教育から高等教育まで,急速にオンライン化への対応を迫り,進めることになりました.そこには教育におけるICTの活用,教職員のスキルアップ,生涯学習環境の整備など,いずれも教育工学の知見を生かしつつ,それらの知識やスキルを持つ人材の育成が求められてきているのです.

 これらの背景から,学会のミッションを改めて見直し,日本教育工学会のビジョン,ミッションを定義し,それにあわせた到達目標と評価指標の設定,中期目標を策定することが必要となりました.この答申を受け,今年3月に企画戦略WGが設置され,重点活動領域委員会と企画戦略国際委員会の委員長,副委員長をはじめ,それら委員会メンバーで,2030年までの中期計画を立てるためのロードマップを作成しようとしています.その過程では,学会運営を今後担っていく若手を育成していくことも含まれます.議論の過程は適宜理事会に報告しつつ,早急に検討,実施が必要なことは,関係者と議論を進め,理事会で進めていきます.

 残念ながら今年の秋大会も全面オンラインとなりました.オンライン開催は,かなりの準備と労力,費用を要するものでしたが,みなさまのご協力,ご尽力のおかげで,昨秋,今春と経験を積み,これまで学会が培ってきた知見を活かしつつ,開催されます.日本教育工学会の5つの特徴,Interdisciplinary(学際性のある),Diverse(多様な研究・多様な研究者が存在する),Open(開かれた),Flexible(柔軟性のある),Accountable(内外に情報を発信する)を生かしてこれからも進んでいきます.学会は会員のみなさまによって成り立っています.10月の秋大会も,積極的なご参加,議論をお待ちしています.