日本教育工学会2020年秋季全国大会(第37回)を迎えて
日本教育工学会 第8代会長 鈴木克明(熊本大学)
(2020年9月)
本学会創立36年目の通算第37回となる2020年秋季全国大会をオンライン開催できますこと,大会実行委員長の美馬のゆり先生,大会企画委員長の姫野完治先生をはじめ,関係各位に心から感謝申し上げます.ご参加いただく学会員と入会希望検討中(?)の非会員の皆さまそれぞれにとって,収穫の多い,そして,楽しいひと時になりますことを祈念しています.
前回の第36回大会はコロナ禍で,信州大学における現地開催の中止を直前に判断しました.しかし,現地実行委員会の発案と用意周到な準備により,オンライン開催を試行し,大成功を収めることができました.また,そのノウハウをいち早く公開し,急遽オンライン開催に迫られていた他学会から,「とても参考になった」との感謝の言葉も頂戴しました.今回もコロナ禍は収まらず,オンライン開催を4月の臨時理事会で決定し,前回のノウハウを生かし,本 学会としては初めてのオンライン正式開催に向けて準備を重ねてきました.「ゆったり発表」を目指した口頭発表中心の春季大会に対して,今回の秋季大会は「じっくり議論」を目指したポスター発表中心という違いがあります.しかも,前回は準備期間がとても短い「試行」であったのに対して,今回はしっかり準備をした上での正式開催.前回のオンライン参加はしなくても発表したと認められたのに対して,今回はオンラインで参加しないと発表取消扱いになる.両者の間には,小さくない差異がありました.そこで,正式開催にふさわしい大会にするために,オンラインならではの強みを最大限に実現すべく,大会日程を大幅に組み替え,デジタル版ポスターの事前登録を発表者にお願いすることとしました.また,非同期型のやり取りも含めて「じっくり議論」を実現する方法を模索し,形は変えても同等あるいはそれを上回る価値を実現する「対面に負けない全国大会」を目指しました.
さて,その成果はどうなるでしょうか.心配でもあり,期待感もあり,複雑な気持ち,というのが正直なところです.幸いにも,オンライン開催であることを前提に募集したポスター発表に,申込みが276件寄せられました.前年比で約50件減ですが,多くの会員からの参加表明(そして発表するための入会申し込み)があったことに安堵しました.申込者全員が順調にデジタル版のポスター登録を済ませ,当日の在席責任時間を全うしてくださることを祈念しています(そうしないと発表取消になってしまいますのでご注意ください).そして,「じっくり議論」を対面ですることと比べて,「そんなに遜色はない」,「オンラインならではの濃厚な議論が展開できた」,「発表をきっかけに交流が発展した」,あるいは「やっぱり対面での全国大会に参加したい」というような体験談が寄せられることを期待しています.まずはどうぞ,ポスター発表をめぐる議論に積極的に参画し,オンラインでの交流や学びの体験を満喫してください.
本学会は,来年度から一般社団法人に移行します.6月20日に行われた第36回通常総会にて,全会一致で法人化が承認されました.次の第38回全国大会(2021年春季大会@関西学院大学)において臨時総会を開いて任意団体を解散し,引き続き,法人化最初の社員総会を開催します.それに合わせて執行部を次の体制に移行するための役員選挙も,間もなく(2020年8月に)始まります.本学会の将来構想を検討するワーキンググループからも,本大会での参加者の皆様との議論を踏まえ,答申をまとめてもらいます.過日,広報委員会からの発案と準備により,学会Webサイトも大幅に刷新しました.オンライン開催が続いている研究会は,研究報告集もオンライン化していきます.(一社)教育システム情報学会と合同で発刊する英文論文誌Information and Technology in Education and Learning (ITEL)創刊号への投稿受付も始まりました。法人化に合わせて執行部と役員の体制を一新し,本学会は,会員間のより活発な情報交換と教育工学研究の発展を目指して,次のステップに進んでいきます.引き続き,会員諸氏の様々な形での積極的な参画を,どうぞよろしくお願いします.