日本教育工学会2020年春季全国大会を迎えて

日本教育工学会 第8代会長 鈴木克明(熊本大学)

(2020年2月)

創立35年目の通算第36回となる2020年春季全国大会を信州大学で開催できますこと,大会実行委員長村松浩幸先生をはじめ, 関係各位に心から感謝申し上げます.ご参集いただく学会員の皆さまそれぞれにとって,収穫の多い,そして,楽しいひと時になりますことを祈念しています.

この大会は,本学会創立35年目の挑戦として始めた全国大会2回化の最初の春季大会です.発表件数が小規模の全国大会並みになっていた年度末の研究会を全国大会に昇格させるという意図で始めた大会2回化ですが,研究会時代よりもとても多くの発表申し込みをいただき,安堵しました.一方で,春季大会はポスター発表を廃止し,口頭発表で「ゆったり発表」できる場にすることを目指しました.会場の関係で発表枠数の制限もあり,予想以上の発表申し込みがあった場合には,発表時間を短縮する措置を考えていました.しかし,ちょうどよい数の申し込みを得て例年並みの発表時間が確保できましたので,「ゆったり発表」の看板は下ろさずに済みました.「様々な制約の中で大会そのものをデザインしていくという挑戦ですね」とポジティブに受け止め,大会開催への道筋をつけてくださった東原義訓先生の導きがあって実現した大会です.会員一同,感謝の気持ちで信州を満喫し,実りある大会にして,この地をあとにしましょう.

今回の大会では,これまでポスター発表に慣れてきた会員の皆様も,口頭発表の形式に戻っていただくことになります.また,自主企画セッションや学生発表セッションなど,今大会からの新しい試みがどうなるかも,楽しみの一つです.口頭発表の申し込みにあたっては,SIG別に発表を募り,どのSIGにも該当しないと思う発表は「その他」として申し込んでもらいました.デコボコが出ることを覚悟しての上の挑戦でしたし,もしかすると「その他」にたくさん申し込みが集まってしまうのではないか,と心配もしていました.割り振り結果としては,SIGごとに7件~38件というデコボコが出ましたが,全部のSIGに発表申し込みがありました.「その他」カテゴリーを第一希望とした応募は23件あり,申込数全体の8.7%という結果でした.「その他」に集まった研究発表は今後,新規SIGのタネとして重要ですし,SIGごとの申込数を把握できたことも,SIG活動の大きさや濃度を表す尺度の一つとして意義があると感じています.セッションを成立させるために一部の応募には第二希望に回っていただいたものもありますが,SIGごとに分かれたセッションと「その他」のセッション,それぞれに集まった発表を,様々な視点から楽しんでください.

本学会の法人化に向けての準備は,着実に進んでいます.理事会での承認を受けて,会員各位に定款(案)などを公開し,意見を求める予定です(本原稿執筆時).忌憚のない意見や今後に向けてのアイデアなど,積極的に表明いただければ幸いです.そのあと,2020年6月20日(土)の本学会総会において法人化することをお認めいただけたならば,2年に一度の役員選挙を法人化後もその任にあたる者の選出として少し前倒して行うことや,法人化にあたって会計年度を改め,現在の4月から3月を1月から12月に変更することで6月の総会を3月の春季全国大会に合わせて開催することなどを念頭に,現在の体制をできるだけ継続できる方向で法人化への準備を整えるロードマップを描いて進めています.会員各位の意見を聴取しながら,無事に着陸することを目指していきます.

法人化は社会からの要請であり,学会が社会的責任を果たし,運営を透明化するとともに,効率化や安定化を進め,学会活動充実の基盤整備にしたいと考えています.学会員の皆さんに「法人化してよかったですね」と言ってもらえるよう,会員各位の益々のご参画とご協力をお願いします.