日本教育工学会2019年秋季全国大会を迎えて

日本教育工学会 第8代会長 鈴木克明(熊本大学)

(2019年8月)

第35回を迎えた日本教育工学会全国大会を名古屋国際会議場で開催できますこと,関係各位に心から感謝申し上げます.ご参集いただく学会員の皆さまそれぞれにとって,収穫の多い,そして,楽しいひと時になりますことを祈念しています.

本学会創立35年目の挑戦として,今年度から全国大会を秋と春の2回化に踏み切りました.このたびの全国大会は,大会2回化の最初の秋季全国大会です.肥大化する一方の全国大会をコンパクト化して,また,発表件数が小規模の全国大会並みになっている年度末の研究会を全国大会に昇格させることで,より参加しやすく,またよりホストしやすい会にしたい.そんな動機で始まった大会2回化ですが,秋季は口頭発表を廃止してポスター発表のみの「じっくり議論」できる場にし,春季は逆にポスター発表を廃止して口頭発表と SIG セッションで「ゆったり発表」できる場にすることを目指しました.大きな変更を伴う挑戦ですので,関係各位には多大なる努力と工夫をお願いすることになりましたが,さてその結果はどうでしょうか,いささか心配しています.

結果の一つとして重要な会員の研究発表の場を確保することについては,昨年度の大会での口頭発表にポスター発表を加えた数に比べて,発表件数が約100 件減りました.その原因はどこにあるのかは分析中ですが,開催時期が早まったことが一因かもしれません.また,口頭発表を好む人が多いためかもしれません.今回の全国大会では,ポスター発表では物足りないと思うかどうか,実際に感じてほしいと思います.また,この減少分を挽回してさらに例年より多くの発表を集めることができるか.その結果は春季大会に何本の発表申し込みがあるかを待つしかありませんが,「全国大会を2回化したのは失敗でしたね」と言われないように,会員各位の積極的な発表申し込みを期待しています.

研究者人口がシュリンクする中で会員数を減らしている学会が多いと報道されていますが,本学会では会員数が着実に微増傾向にあり,過日3千人を突破しました.この傾向を持続するためには何が必要か.本学会が会員各位にとってより魅力的なものであり続け,さらに発展していくためには何をすべきか.この問題意識の下,本学会の将来構想をまとめてもらうワーキンググループを理事会の承認を受けて時限的に設置し,来年11月をめどに答申をまとめる作業を依頼しました.理事連続在任の8年ルールで退任した美馬のゆり前副会長のもと,若手中心にメンバーを構成し,熱心に議論を重ねてもらっています.

その結果は,過日の総会開催時に開かれた会員向けイベントでも紹介されましたが,将来構想WG の提言内容も次の4つに具体化されました.

  • 完全2言語化
  • 人材育成・スキル認定機能の強化
  • 論文誌を(厳密に)定期刊行化
  • データに基づく経営判断システムの構築

本大会においても,会員各位との意見交換をするためのセッションが予定されています.将来構想WG の活動にたいして,多くの会員の皆さんの積極的な参画を期待します.

役員選挙の結果に基づき過日の総会で承認を受け,会長として2期目,最後の2年間が始まりました.残りの在任期間での最大の挑戦は,学会の法人化にあると受け止めています.なるべく早い時点に構想をまとめ,会員各位の意見を聴取しながら,無事に着陸することを目指していきます.学会員の皆さんに「法人化してよかったですね」と言ってもらえるよう,益々のご参画とご協力をお願いします.