実践に活用できる教育工学の研究成果を
日本教育工学会 第8代会長 鈴木克明(熊本大学)
2019年3月
教育家庭新聞の求めに応じて,「教育工学の研究成果を実践に活用」と題した年頭のご挨拶を届けた.
「教育工学の研究成果を実践に活用」を可能にするためには,本学会の会員が実践現場の課題解決につながるようなテーマを取り上げ,活用したいと思える研究成果を届けることが不可欠である.さて,今年はどのようなテーマを掘り下げ,どのようなメッセージを現場に届けるのか.まずは現場からのニーズを拾い上げ,研究者の目線で新鮮なアプローチを考案し,実践者と協力して実用的な成果を創造・共有していきたい.そんな思いを新たにして,会員の皆さんと何ができるか,何をすべきか,ともに考えともに進んでいきたい.以下に,教育家庭新聞新年号の「ご挨拶」を再掲する.
平成最後の年を迎えた.新学習指導要領への移行が目前に迫る中,「何を学ぶか」から「何ができるようになるのか」への視座の変換が叫ばれている.これこそは教育工学研究が長年にわたって取り組んできた学習者中心の視点で教育の成果を捉えることに他ならない.
出口である学習目標を明確し,学習者一人ひとりの確実な達成を支援するために,現状とのギャップを埋めていく.「金太郎飴」と揶揄されてきた,全員に等しく求める出口に加えて,個性伸長・自己実現のために必要な一人ひとりに固有な出口を多様に設定し,バラバラな達成状況を把握していく仕組みを準備するためには情報システムの活用は欠かせない.
また,低次の知識獲得に比べると把握することが難しい 21 世紀スキル等の高次のコンピテンシー獲得をどう「見える化」するか.この重要課題にも評価についての教育工学研究の貢献が期待できよう.
他方で,働き方改革を実現するために,時間を意識し,教育実践をより効率的にすることも求められている.教育の効果を高めることとともに,効率をより高くすることは「工学」の目指すところであり,無駄を省く知恵も蓄積されてきた.
目前に迫る教育課題に挑むために,教育工学の研究成果を活用していただければ嬉しい.