新年のご挨拶
教育工学研究の出番が広がる

日本教育工学会 会長 山西潤一(富山大学)

2016年2月

 新しい年を迎え,それぞれに教育・研究への新たな思いを広げられていることと思います.学校教育から高等教育,ひいては地域創成のための地域人材づくりに至るまで,アクティブ・ラーニングというキーワードが目立つこの頃です.昨年11 月に全米教育工学研究大会に参加しましたが,ここではアクティブ・ラーニングという言葉とともに,インテンショナル・ラーニングというキーワードも飛び交っていました.新しい学習指導要領の改定にあたっての視点でも,学習内容はもとより,どのように学ぶか,その結果として何ができるようになったかなど,アクティブ・ラーニングとともに,カリキュラム・マネジメントや学習評価の充実があげられています.どれも,新しい時代に必要な資質・能力をどう育てるかという問題です.近い将来,コンピュータ等の情報技術の進歩で,分野によっては,ロボットや知的情報システムが人に代わって仕事をする時代になり,今ある職業の6 割以上がなくなると予想する研究者もいます.そのような時代を生きる児童生徒に,自立的問題解決能力や他者との協働,ICT などの道具を上手に活用する力が求められているのです.

 第2期教育振興基本計画の目標を達成すべく,教育のIT 化に向けた環境整備も進んできています.いつでもどこでもインターネットに繋がるユビキタスな学習情報環境,一人一台がようやく現実のものとなってきたタブレットPC など,学校でのICT 活用がようやく日常になってきつつあります.もとより,教育工学研究は,学習環境,学習内容やカリキュラム開発,教材開発・教育方法,高度な指導力を持った教員の養成に関わる多様な研究分野を包摂しています.情報技術の進歩やグローバル化が進めば進むほど,教育工学研究の出番が広がるのです.昨年9 月には,学会のグローバル化戦略としてAECTとの学術交流協定を締結し,米国で日本の教育工学研究を紹介する場が広がりました.また,今年は,グローバル化の中で教育改革に取り組むアジア諸国で,教育工学研究がどんな役割を果たせるかを考えるシンポジウムも企画されています.

 次代に向けた教育改革の歩みが加速される中で,教育イノベーションをリードする学会として,本年も,会員の皆様とともに充実した活動を展開して行きたく思います.皆様のご支援,ご協力をよろしくお願い申し上げます.