日本教育工学会
第30回全国大会開催にあたって

日本教育工学会 会長 山西潤一(富山大学)

2014年9月

 日本教育工学会第 30 回全国大会を岐阜の地で開催できますことを,心からお喜び申し上げます.既にご案内のように,今年は学会創立 30 周年の記念すべき年でもあります.1984 年 11 月に日本教育工 学会が会員数 365 名で設立され,翌年の 1985 年に京都教育大学で第一回の全国大会が開催されたのです.CAI 学会,電子通信学会教育工学研究会,国立大学教育工学センター協議会研究会との連合での開 催でした.「情報化時代における教育方法」をテーマにパネルディスカッションが行われ,166 件の発表に約 500 名の参加者で第一回大会がスタートしたのです.

 さて,30 年の歳月の経過の中で,学会もいまや 2,800 名余りの会員を抱え,全国大会の発表件数も 450 件近く,約 1,000 名の参加者が日頃の研究成果を発表するまでに大きくなってきました.現代的教育課題の解決に教育工学が果たす役割がますます高まってきた結果です. 昨年来,学会の社会的プレゼンスを高めるための試みをいくつか行ってきましたが,この 30 回岐阜大会を 30 周年記念大会とし,大会企画委員会や国際交流委員会,会場となる岐阜大学を中心にした実 行委員会の皆様の多大の努力で,新しい取り組みがプログラムされました.

 一つには,学会の 30 周年記念企画として,シンポジウム「教育工学研究のグローバル連携を考える」 を企画しました.従来から学術交流を進めてきた中国の中国教育技術協会や韓国の韓国教育工学会に加え,よりグローバルな展開を図るべく米国の AECT(The Association for Educational Communications and Technology)の代表を招聘し,各国の教育工学研究の現状を理解し,グローバル化時代にあった教育工学研究の国際連携を深めたいと思います.学会の招聘を快く受けていただき参加して下さる,AECT の Stephen W.Harmon 会長,韓国教育工学会の In Sook Lee 会長,中国教育技術協会の董玉琦常務理事に感謝申し上げると共に実り多いシンポジウムになることを期待したいと思います.

 二つには,これまでの課題研究を改め SIG(Special Interest Group)を立ち上げ,その最初の議論の場が設けられたことです.現代的教育課題に対応したそれぞれの SIG で,年間を通して継続的に議論 を行い,研究を深めていこうとするものです.全国大会では,各 SIG のコーディネータが中心になって, 研究テーマへの共通認識や今後の進め方が議論されます.継続的な研究の活性化に向けた第一歩です. また,登壇者の教育や研究にかける思いを聞きながら,参加者がそれぞれに新たな教育研究への興味関心を高めるトークセッションも前回同様企画され,今年は新たに始まった SIG に関するトークセッショ ンが行われます.コーディネータを中心に興味関心を共有する SIG 活動が活発に行われることを期待したいと思います.教育工学を支える関連企業の皆さんによる最新の教育システムやデジタル教材などが 紹介され,地域の名産を味わいながら産学協同で教育支援機器や教材を考える楽しいランチセッションも従来通り企画されています.

 また,今年の全国大会から,全体会で名誉会員の顕彰をさせていただくことにしました.長年,教育工学の発展に貢献していただいた先達の功労を顕彰し,今後はより高い見地から学会をご指導いただき たく思います.

 学会は研究発表の場であると同時に,他者の意見や発表から研究をより深め,新たなアイデアを生み出す場です.日頃の研究の悩みを語り合う絶好の機会でもあります.今大会をとおして,参加者の皆さ んの交流の輪が広がり,研究がいっそう発展することを祈念しています.

 最後になりましたが,この大会開催に向け,多大な時間と労力をかけて企画・準備していただいた美馬のゆり委員長を中心とする大会企画委員会の方々,学会を共催していただき,会場の提供や運営に多 大のご協力をいただいた岐阜大学森脇久隆学長,村瀬康一郎委員長をはじめとする大会実行委員会の 方々,協賛や展示で多大なご協力をいただいた企業の方々に厚く御礼申し上げます.