日本教育工学会の会長として

日本教育工学会 第5代会長 赤堀侃司

2005年6月18日

歴代会長へのお礼

 今回の役員改選の選挙によって,第5代日本教育工学会の会長に選ばれましたが,まず始めに,清水康敬前会長に,心から厚くお礼申しあげます.なによりも,すべてお膳立てをしていただき,学会の体制を作られた前会長に,本当に驚嘆しております.

 東京工業大学には,坂元昂第2代会長,清水康敬第4代会長など,並はずれて優れた人材がおられて,本学会に貢献されてきました.歴代の卓越した会長には,正直なところ,どうしても及ばないこと,力量がないこと,自信がないことなど,とても会長の器でないと思っていましたので,戸惑っております.しかし,確実に時間が経過して,ニューズレターの編集委員会から原稿依頼が来て,ともかくバトンタッチするのだと覚悟しました.日頃からお世話になっている水越敏行第3代会長からも,協力するから学会のために頑張るように言われ,本当に恐縮しました.歴代の会長の先生方,どうか,よろしくお願いします.

3人の副会長の協力で

 そこで,副会長を3名にお願いいたしました.永野和男,山西潤一,矢野米雄の先生方です.私の力量不足をなんとか副会長でカバーしていただきたいと思い,協力をお願いしましたが,3人とも,大学の運営に関わっておられ,きわめて忙しい身であるにもかかわらず,ご快諾をいただきました.私も,2年間理事を離れていましたので,最近の情勢がわからず,学会運営の感覚が鈍っており,どうしても協力体制が不可欠なため,ありがたく思っています.それから,学会は基本的にボランティアがベースになるので,理事の皆さん,評議員の皆さん,委員会の皆さんのみならず,会員一人一人のご協力を頂かなくては,健全な運営ができません.どうか,皆さん,よろしくお願いします.

会員数の増大を

 私は,他学会の理事会に出て,驚いたことがあります.見事なほど,会員が増大していたのです.それは,並はずれた素晴らしい企画と実行力でした.それを目の当たりにして,なんとか本学会も会員数を増加させたいと思うようになりました.そのためには,なにか戦略が必要で,その相談もしたいと思います.あの学会に入れば,なにか役立つ,最新の情報が得られる,優れたアイデアが得られるなど,何かメリットがなければなりません.現在は,会員が,学校関係に限られているような気がします.これを,企業にも研究機関にも,広げたいと思います.このため,企業関係の学会員にも,ご協力をお願いしたいと思います.

 国立大学が法人化して強く感じることは,私達教員にも,運営する,マネージメントする,感覚が必要だということです.考えてみれば,これまでも,研究室を運営してきました.その運営感覚は,研究室だけでなく,大学,学会,委員会など,あらゆる組織や活動に不可欠な感覚です.是非,企業の方の優れた経営感覚に,学会も学びたいと思っています.

事務局の体制について

 どの組織も,財政基盤を含めて,安泰でなくなってきました.絶えず,経営危機にさらされていると思います.このたび虎ノ門のビルから,基本的に事務局が離れて,分散して学会事務を実施することになりました.まだとまどっているのが現状ですが,なんとか皆さんのご協力で乗り切りたいと思います.永野副会長も,清水前会長も,いくつかの仕事がマニュアル化し,IT化を促進すれば,どこでも引き受けることができるようになるので,そのための試験をしていると考えればいいと言う点で,一致しました.どの仕事も,どの組織も,改革や変革が出てきます.なんとか,取り組みたいと思っております.

国際化に向けて

 企業では,グローバル化が当然になり,優れた素質を持っていれば,中国,インド,アメリカ,韓国など,国籍を問わず受け入れます.それだけ,厳しい競争になっています.その波は確実に,大学,学校教育にも及んでくることは,必至です.優れていること,それは,国籍を問わないことは当たり前であって,優れた研究は,国を超えて評価されるはずです.教育工学の果たす役割は大きく,これからは,アジア,オセアニアなどの教育工学会と連携できればと思います.また,アメリカを中心とする国際会議などとも,積極的に研究交流をしたらどうかと思っています.幸い本学会には,国際的に通用する仕事をされている会員がおられますので,このような面にも積極的に関与したいと思っています.

これまでを振り返って

 これまでを振り返ると,昨年9月に,第20回の記念大会が東京工業大学で開催されたことが,つい昨日のように思い出されます.会員の皆様のおかげで,1100名を超える参加者を得て,会場校として大変嬉しく思いました.さらに,振り返ってみると,霞ヶ関ビルの35階の会場で,溢れるばかりの人と,蒸し返すような人いきれの中で,熱く語った学会設立のシンポジウムが開かれ,事務局を仕切っていた,当時の東京学芸大学の井上光洋先生が興奮していた20年前のことを,思い出します.

 ようやく成人式を迎えた本学会が,今後どのような発展をするのか,どのように教育界や産業界に貢献できるのか,未知の部分が多いですが,会員の皆様と共に,努力していきたいと思います.何よりも,会員の皆様が,面白い研究だ,役立つ研究だ,知的な好奇心が得られる,議論することが楽しい,発表したい,と思って頂くことだと思います.
どうぞ,よろしくお願いします.