JSET(ジェイセット)元年を迎えて

日本教育工学会 第4代会長 清水 康敬

2004年1月5日

1.JSETのキックオフ

 1983年に本学会が創立されて以来,本学会の英文略称はJET(ジェット)と呼ばれてきました.このいきさつは分かりませんが,本学会の英称はJapan Society for Educational Technologyですので,頭文字をとるとJSETとなります.外国人研究者からJETの意味と理由を聞かれたこともありました.国際的に見ても分かりやすい英称が重要であると感じてきました.

 そこで,本学会創立20周年を迎えるにあたり理事会評議員会等で英称の変更を検討していただきましたところ,理事・監事・評議員の全員から賛同をいただきました.その結果,本年4月から本学会英称をJSET(ジェイセット)と改訂することになりました.

 それに伴って今後は理事会にご相談しながらJSETのロゴマークのデザインをしたいと考えています.また,JSETのデザインを使った学会論文誌の表紙デザイン,ニューズレターのデザイン,学会ホームページのデザイン等も検討課題となります.さらに,会員データベースを新たに開発していますので,よりきめの細かい会員サービスができるように学会ホームページが改良される計画です.

 また,JSETのキックオフと共に創立20周年という点では,6月19日(土)に開催される第20回通常総会と,9月23日(木,祝日)~25日(土)開催の第20回全国大会が記念すべき事業となるかと思います.会員におかれましては,どうぞよろしくご予定いただきたくお願いします.

2.海外における学校教育の情報化の進展と本学会

 昨年10月に(社)日本教育工学振興会の海外調査で3年ぶりに米国の学校をいくつか訪問しましたところ,学校の情報環境整備と教員のIT活用の点で大幅な進展をしていました.インターネットに接続されたコンピュータ台数が,2002年秋の段階で生徒4.8人に1台の割合になり,92%の教室がインターネットに接続されています.これらは我が国がさらに大幅な差をつけられたことを意味しています.また,手書き入力できる電子情報ボードの普及が進み,簡単な操作でコンピュータを使っているという時代になってきました.

 ITを活用した教員の指導力向上にも著しいものを感じました.多くの先生がコンピュータやインターネットを活用した授業に情熱的でした.そのとき,ISTE (International Society for Technology in Education)が作成したNETS (National Educational Technology Standard) for Teachersが全米各地区,各学校区,各学校で有効に活用され,それによって教員の指導力が向上しているように思いました.このように米国の学会の成果が学校教育に大きな影響を与えております.JSETとしても,創立20周年を迎えるのを機会にもう少し教育界に影響力をもつ活動をしていく必要性を感じています.これには世界の状況を把握しながら今後の展開を検討していきたいと考えています.

 尚,以下の国際シンポジウムが国立教育政策研究所と文部科学省の主催で開催されますので,本学会も協賛団体として参加して本学会員にご案内していきたいと思います.

第3回教育改革国際シンポジウム:
今後の教育の情報化推進の国際動向~ポスト2005の日本を考える~

基調講演は文部科学省審議官を予定.
米国,英国,韓国,シンガポールから政策担当者あるいは政策研究者を4人招聘してプレゼンテーションの後パネル討論が行われる予定.

日時:2004年3月15日(月)13:30~17:30
場所:一橋記念講堂

3.学会評価の向上を目指して

 本年4月1日から国立大学と大学共同利用機関が独立行政法人に変わります.それに伴って私立大学も危機感を高めています.この関係から大学は説明責任がより必要になりますし,大学評価がより重要になってきております.大学全体の評価から,学部・研究科,学科・専攻に対する評価となり,研究者や教育者等の個人に対する評価が求められています.

 そのためか,大学関係者の学会における発表が最近多くなり,投稿される論文数も増えています.そこで,本学会では研究成果の発表の場としての論文の投稿,全国大会での発表,研究会での発表等を積極的に受け入れていきたいと思います.ただし,よりキチンとした審査が求められると思っています.

 本学会の大会や研究会で発表をし,本学会に論文投稿をすることが社会的に高い評価を受けるという学会を目指したいと思います.そのためには会員の方々のご協力を得て役員や各種委員会委員の努力も必要と考えています.本学会の会員の研究成果が最終的には本学会論文誌に投稿され,厳格な審査の下に採択されることが最も重要なことです.論文にまとめるための支援も必要になると考えている次第です.