会長退任のご挨拶
日本教育工学会 第9代会長 堀田龍也(東京学芸大学)

令和7年3月7日の代議員総会にて日本教育工学会の役員の改選が行われ,第9代会長としての任期を無事に終えることができました.2年×2期の計4年間,会長という重責に対して十分に役目を果たせたかは自信がありませんが,なんとか第10代の山内祐平会長に引き継ぐことができました.会員のみなさまのご理解・ご協力のおかげで,無事に任期を満了することができましたこと,心より感謝申し上げます.
私の在任中の4年間について,振り返っておきたいと思います.
第8代の鈴木克明会長から会長任務を引き継いだ頃は,まだコロナ禍の影響が大きい時期でした.全国大会2回化も緒に就いたばかりの頃でしたので,混乱も多くありました.教育工学という研究分野の性質を鑑みれば,オンラインでの大会開催が「できない」という選択肢はあり得ないとはいえ,そのためのシステム開発のコストは膨大であり,やったことのない大会運営への不安は大きかったものです.参加された会員のみなさんにも不安な思いをさせてしまったことと思います.無事にコロナ禍を抜け,「会って繋がる」ことの大切さを再確認した私たちは,オンラインの良さを残しつつ次第にフル対面開催の大会実施に近づいてきているところです.
鈴木先生は,その就任期間中に,本学会を一般社団法人に移行させるという大きな決断をされ,総務委員会を中心にその準備が丁寧に進められてきました. 2020年6月20日の通常総会にて全会一致で法人化が承認され,2021年3月7日の臨時総会において任意団体であった日本教育工学会は解散となり,引き続き開催された法人化最初の社員総会において,私が会長に指名されました.このような経緯から,私に与えられた最大のミッションは,一般社団法人に相応しい安定運営でした.そのためには,会員サービスの向上を第一に見据え,コストダウンを図る必要がありました.
紙のニューズレターの印刷・送付の廃止とその代替のためのメール配信,Webサイトでのイベントの案内や報告の迅速化とアーカイブ化,SNSとの連携による情報発信などは,広報委員会の絶え間ない努力により実現しました.また,全国大会予稿集や研究会報告集のPDF化と冊子廃止もまた,コスト削減に大きく寄与しましたが,これは大会企画委員会や研究会委員会の努力によるものです.
加えて実現したことに,採録された論文の抜刷の購入義務の廃止と掲載料支払いへの変更があります.これらは,紙の時代からデジタルの時代の常識に運用を合わせて行く取り組みでした.新規に採択された査読論文のJ-Stageでの早期公開や,研究報告集のJ-Stage掲載は,教育工学研究のトレンドをいち早く社会に還元すると同時に,引用利便性を向上させるものでした.また,過去に著作権等の関係でJ-Stageに掲載されていない論文が300編を超えているという実態を把握し,このままにしておくのはJSETの研究資産が埋もれてしまうと考えました.現在,許諾を経て順次公開を進めております.
私の在任中に十分に及ばなかったこととして,学会IRがあります.会員の声を聞く取り組みまでは行うことができましたが,若手会員が増加している現状を会員サービスに転化する段階までは進むことができませんでした.成城大学で開催された2025年春季全国大会のチュートリアルセッションで,若手会員の代表から第9代会長の私へのインタビューが行われましたが,そこで出された意見である若手向けの諸サービスを手がけていくタイミングにあるかなと思っております.このあたりは第10代の山内祐平会長にお任せすることとなりました.何卒よろしくお願い申し上げます.
1984年11月設立のJSETは,この4年の間に40周年を迎えました.4年前は約3,300名だった会員数は,3,700名を超える会員数となりました.力量不足の私を支えていただいた4人の副会長,各種委員会のご担当をいただいた役員や会員のみなさまに,あらためまして感謝申し上げ,退任のご挨拶とさせていただきます.