新年度のご挨拶

日本教育工学会 会長 堀田龍也(東京学芸大学)

 2024年度を迎えました.COVID-19で苦労した日々も一段落し,街には人々が溢れています.東京駅や羽田空港には4月からの新しい生活を迎えた方々と外国人旅行客が往来しています.世の中に活気が戻ってきたような印象です.

 先に熊本大学黒髪キャンパスにて開催された2024年春季全国大会は,たくさんの方々のご参加を得て,大成功となりました.口頭発表も340件を超え,参加者は730名を超えました.ご参加いただいた学会員の皆さまが,楽しそうに交流し議論されている様子を拝見し,JSETにもまた対面の活気が戻ってきたのだなと感じたところです.

 直近の理事会で報告されたJSETの会員数は3,650名を超えました.人口減少で会員数が減少する学協会が多い中,JSETは会員数が今でも右肩上がりの学会です.この背景には,教育DXの進展やAI等の情報技術の教育利用の進行があります.オンラインでのミーティングも今では日常化し,大学の講義等でもオンラインを視野に入れた教育方法やカリキュラム編成がなされるようになりました.対面の良さ,教師主導の価値を残しながら,learner-centeredな学びを実現し,時間や空間を超えた「学びやすさ」を提供することが社会から教育界への要請となっている今日,教育工学という学問に期待が集まっているのです.

 このような時代のJSETには,安定運営が求められます.一般社団法人に移行して3年が経過しましたが,現在のところ,学会執行部,総務委員会,事務局をはじめとする役員の皆様の努力により,学会運営は安定しています.

 しかし学会運営には課題もまた山積しています.1つは役員の業務負担です.特に若い役員に運営上の負荷が高くなる傾向が生じております.会員のみなさんの学会運営への御協力に強く期待するところです.また,論文投稿数が増加したことによる編集委員会の負担も大きくなっています.たくさんの会員の皆様に査読に御協力いただく必要があります.教育工学という研究分野をさらに良い学問分野にするために,ていねいで前向きな査読をお願いします.一方,投稿する会員の皆様には,剽窃等の事案の回避に慎重になっていただくと同時に,投稿規定に書かれているルールを逸脱しないような確認をお願いするところです.これもまた,良質な論文を輩出するJSETであるために必要な努力です.

 学会執行部では現在,これらの学会運営のほか,重点活動領域の新設や,会員サービスのさらなる向上に取り組んでおります.加えて,J-Stageに掲載されていない過去の論文等を掲載し,JSETの研究資産が広く参照されるような取り組みをしております.会員への情報提供についても,学会Webサイトの頻繁な更新,SNS等でのプッシュ型の情報提供,ニューズレターの電子化などの形で迅速化を図っております.加えて学会業務を見直すための委員会を諮問機関として設置し,会員サービスの質を保証しながら合理的でコストダウンできる方法を検討しています.

 JSETは1984年11月に設立されました.まもなく40年を迎えます.9月7-8日に東北学院大学で開催される2024年秋季全国大会では,40周年の企画事業が行われる予定です.東北の地で会員の皆様にまたお会いできることを楽しみにしております.