会長・副会長挨拶
信頼性のある知の共有のために
日本教育工学会 副会長 山内祐平(東京大学)
日本教育工学会ニューズレター NO.256より(2022年11月)
副会長挨拶シリーズも2巡目の3回目になりました.今回は編集担当の山内が「信頼性のある知の共有のために」と題して,現在編集委員会が抱えている課題とそれに対する対応について説明させていただきます.
日本教育工学会論文誌は,46 年間にわたって教育工学会が生み出した知を集積し共有する役割を果たし続けてきました.累計の掲載論文数も順調に増加しており,編集委員会一同,みなさまの投稿を心待ちにしております.
一方で,研究倫理の厳格化や学会員の多様化などを背景に,掲載に関してトラブルが発生する事案も増えています.残念なことですが,日本教育工学会論文誌においても,昨今不適切な引用による掲載論文の取り消しや,掲載論文の修正に関する厳重注意案件がありました.
編集委員会では,このような問題の防止に関して,以下の3点の対応をとっています.
1)剽窃チェックソフトウェアの導入
2022 年01 月から剽窃チェックソフトウェアを導入し,投稿された論文全てに剽窃チェックをおこなっています.自分や他者の論文を引用することなく使用していた場合は,デスクリジェクトを含め厳しい対応がなされることになります.
2)学会員に対する普及啓発
2022 年09 月に開催された秋季全国大会のチュートリアルセッション3 では,「論文掲載に関するトラブルを避けるためには」と題して,学会員に対してトラブルを防止するための対応などについて情報共有しました.引き続きこのような普及啓発活動を展開していく予定です.
3)著作権規程の整備
2022 年08 月には,論文誌の著作権規程が整備されました.この規定については,日本教育工学会のウェブサイトの著作権規程からご覧いただくことができます.
この規程では,著作者の責任や著作権侵害排除について明記されるとともに,著作者による第三者著作物の利用,特に評価尺度等の利用についてルールが定められています.また,営利目的で論文等の著作物を利用する場合には,原則として事前に,別に定める著作物利用許諾申請書に従って,学会の許諾を得なければならなくなりましたので,ご注意ください.
論文の作成・投稿にあたっては, この著作権規程とともに,投稿規程を熟読いただきたいと考えております.特に「科学者の行動規範と不正行為の禁止」についてのセクションには,何が不正行為とみなされるのかがまとめてありますので,必ずお目通しください.
論文に関するトラブルが起きると,著者も社会的制裁などのダメージを受けますし,何よりも学会誌で最も重要な掲載内容に関する信頼性に傷をつけることになります.学会誌に信頼性のある知を共有・集積することは,学会というコミュニティの核になる活動であり,学会員全員が守らなければならない大切な資産です.みなさまのご協力を何卒よろしくお願い申し上げます.