日本教育工学会2021年春季全国大会を迎えて

日本教育工学会 第8代会長 鈴木克明(熊本大学)

(2021年3月)

創立36年目の通算第38回となる2021年春季全国大会を関西学院大学を開催校としてオンライン開催できますこと,関係各位に心から感謝申し上げます.ご参加いただく学会員の皆さまそれぞれにとって,収穫の多い,そして,楽しいひと時になりますことを祈念しています.

この大会は,本学会創立35年目の挑戦として始めた全国大会2回化の最初の春季大会であった信州大学での第36回大会のオンライン開催試行のレガシーと初めての正式なオンライン開催となった札幌での秋季大会の経験を基盤に実施する2回目のオンライン全国大会であり,初めての正式なオンライン春季大会です.幸いにも前年の春季大会(信州)での発表件数を上回る申し込みをいただきました.前年と同様にSIG委員会にプログラム編成のお手伝いをしてもらいました.SIGによって50件以上の第一希望を集めたところと一桁代に留まったところがあり,SIG間の発表申し込み件数の差は広がりました.コロナ禍の影響で,再び対面での会員間交流は実現できませんが,オンラインの口頭発表でも活発な参画が得られ,それぞれの発表に対しての議論が深まることを祈念しています.

今回の大会は,任意団体として36年間活動してきた本学会最後の全国大会となります.昨年の総会での議決に従い,本大会2日目に行われる臨時総会で任意団体の解散を宣言します.その直後に,本年1月4日に登記を済ませた「一般社団法人日本教育工学会」としての最初の総会を開催し,先の選挙で選出されている新役員体制への移行を決議します.本大会が無事に閉会を迎え,任意団体としての残務処理を行うことで,第8代会長としての私の仕事が完結します.法人化の移行に伴い会計年度が4月~3月から1月~12月に変わるため,満4年に少し足りない任期となりましたが,これまでの学会運営を支えていただいた第18期役員の方々をはじめ,本学会会員の皆様に,厚く御礼を申し上げます.どうもありがとうございました.

本学会のこれまでの体制をできるだけ継続できる方向で準備してきた法人化でありますが,法人化は社会からの要請に基づくものです.本学会が社会的責任を果たし,運営を透明化するとともに,効率化や安定化を進め,学会活動充実の基盤整備が一段と進んでいくことでしょう.将来構想WGからの答申をもとに,本学会の今後の活動指針となるビジョン・ミッション・バリュー・達成目標を内外に広く告知し,有言実行をもって社会的責任を果たしていくことになります.

時代が大きく変化する中,本学会が果たすべき役割はますます重要になっています.あらゆる教育の分野で変革が求められ,それを正しい方向に導いていくためのエビデンスに基づく推進力が必要とされています.さらにコロナ禍によるオンライン授業の経験共有によって,ICTに対する関心が高まり,経験知が広がり,そして期待と不安も高まっています.本学会は,図らずも,重要な社会の転換期と時を同じくして,法人化されることになりました.ますます高まる本学会への期待を裏切らないよう,そして新しい時代を切り拓いていく担い手となれるよう,一つひとつの意思決定を大切に,そして大胆に仕切り直す好機に巡り合ったと言うことができるでしょう.

新体制のもとに本学会の会員全員が協力して,様々な教育現場の実践に貢献できる教育工学研究を前進させ,同時に新しい実践を創造していきましょう.会員相互が切磋琢磨し,互いに影響を受けながら新しい知見を共創することができるワクワクするコミュニティを構築していきましょう.そして,様々な研究の文脈と専門性を本学会に持ち寄ってくださる新しい会員をやさしく迎い入れてともに歩む仲間の輪を広げ,「教育工学マインド」を共有していきましょう.何よりも,会員の皆さん自身にとって,「この学会が私のホームグランドだ」と思えるような会にするために,「私からの少しばかりの貢献(my two cents)」を少しずつ出し合うことができるよう,会員各位の益々のご参画とご協力をお願いします.