学会が生み出す知の共有を支える編集委員会

日本教育工学会 副会長 山内祐平(東京大学)

日本教育工学会ニューズレター NO.251より(2021年11月)

副会長挨拶シリーズも3回目になりました.今回は編集担当の山内が「学会が生み出す知の共有を支える編集委員会」と題して,担当しております編集委員会とITEL編集委員会の業務について説明させていただきます.

編集委員会は和文誌「日本教育工学会論文誌」の編集を担当する委員会です.編集長である私,副編集長である小柳和喜雄,編集幹事の緒方広明・向後千春・望月俊男を中心に,39名の編集委員が投稿されてくる論文の審査にあたっています.

日本教育工学会論文誌は,国内の教育工学に関するトップジャーナルのひとつであり,現在2,263本の論文が掲載されています.前身である日本教育工学雑誌の発刊は1976年であり,現在にいたるまで45年間にわたって教育工学会が生み出した知を集積し共有する役割を果たし続けてきました.編集委員一同,この歴史のもつ重さを噛みしめながら教育工学発展につながる論文を一本でも多く掲載したいと考え,日々努力を積み重ねています.

学会の知の共有のためには,できるだけ多くの論文を学会誌に掲載することが必要です.一方で,学会誌には「信頼できる情報を集積する」というミッションがあり,研究の発展的連鎖に向けて信頼性の高い論文のみを掲載するという制約がかかります.この2つの条件をクリアし,さらに学会誌を発展させるために2020年04月に担当者・査読者ガイドラインを制定しました.ガイドラインに掲載された査読の基本方針の最初には「査読は,本学会の発展と会員の利益を念頭におき,本学会が取り扱う分野で学問・教育の発展のために何らかの意味で良い影響を及ぼす可能性のある論文を,学会誌に掲載するために行う.よって,研究の水準にとらわれすぎず,将来性のある論文を積極的に採択する.」という文言が入り,積極的に可能性がある論文を採択するスタンスを明示すると同時に,論文の信頼性・妥当性を担保するための観点や手続きについて共有するための文書になっています.

ITEL編集委員会は,日本教育工学会(JSET)と教育システム情報学会(JSiSE)が協力して今年度新たに発刊した英文誌”Information and Technology in Education and Learning” (ITEL)を編集するための委員会です.ITELはJ-STAGEをプラットフォームとしたオンラインのオープンアクセスジャーナルになっています.こちらの編集委員会はJSETとJSiSEの共同運営になっており,編集委員長の望月先生・鷹岡先生を中心に20名の編集委員が編集作業にあたっています.ジョイントプロジェクト立ち上げの大変な苦労を乗り越え,日本を代表し世界的にも知られる教育工学領域の英文誌に成長できるよう,現在論文の掲載が進んでいます.

論文が学会誌に掲載されるということは,執筆者にとって研究業績が増えるということでもありますが,本質的には学術コミュニティが知を共有し新たな知を生産するための重要なステップです.あらゆる研究は,先行研究を踏み台にして「巨人の肩の上にたつ」ところから始まります.和文誌「日本教育工学会論文誌」・英文誌「ITEL」にぜひ多くの論文を投稿していただき,力をあわせて教育工学を発展させていければと考えております.