【特集記事】重点活動領域 学習環境部会の取り組みについて

山本良太(大阪教育大学)

 構成主義に基づく学習観では、知識を状況から切り離された実態として捉えるのではなく、学習者と環境との相互作用を通じて構成されるものであると考えます。すなわち、学習において、学習者と環境の在り様は不可分な関係にあります。こうした構成主義の考え方が日本教育工学会でも広く共有されるに従って、教育のデザインの対象も教授だけでなく、環境へと拡張しています。

 このような背景のもと、重点活動領域の第2期学習環境部会では、特に「教員はどのように学習環境をデザインしているのか?」という問いを立て、2年間活動してきました。構成主義の考え方に従えば、教員のデザインという行為もまた、環境との相互作用しながら、またそれを独創的な形で制御しながら達成されていると考えられます。しかしながら、実践報告や論文という形で学習環境デザインが知見化されるなかで、その構築の具体的なプロセスが不可視化されてしまいがちになるのではないか、という課題意識がありました。そこで私たちは、特に教員の学習環境デザインのプロセスに着目し、初等中等教育や高等教育のフィールドで学習環境デザインに取り組む実践者を対象としたインタビュー調査および分析と仮説生成、そこで得られた知見の共有を行ってきました。

 期間の前半では、特に美馬・山内(2005)および山内(2020)が提示する、学習環境デザインの4側面(空間・人工物・活動・共同体)を枠組みにして、教員がどのように4側面を統合しながら学習環境をデザインしているのかを調査しました。その結果、教員は自身の経験や教育的信念に基づく「基点」を構築し、またそれらから現状を捉えたデザインの「起点」があることが分かってきました。期間の後半では、前半の調査から得られた知見を手掛かりに、よりミクロに、教員は自身の経験や教育的信念を持ちながらも、どのように学習者を含む環境と相互作用しながら学習環境をデザインしているのかを調査しました。特に、環境をどのように「観察」を通じて捉え、それを「分析」し、「デザイン」へと落とし込んでいるのかに着目しました。暫定的な結果として、教員は環境的な制約の中で、しかしながら観察と分析に基づくよりよいデザインのために環境を拡張させながら、試行錯誤の中でそれを達成していることが分かりました。前半と後半の調査の暫定的な結果は、それぞれ2024年春季全国大会、2024年秋季全国大会の企画セッションにて共有してきました(山本ほか 2024a、山本ほか 2024b)。今後、これらの調査を改めて精査するとともに、たどり着いた仮説を論文として共有できるよう、引き続き取り組んでまいります。

 最後に、当部会の調査に協力くださった先生方、全国大会の企画セッションにてフィードバックをくださった皆さま、当部会の活動を支えてくださった益川委員長、稲垣副委員長、幹事の先生方、そしてともに活動に取り組んでくださった部会メンバーに感謝を申し上げます。私が部会長をお引き受けする際に考えたことは、「学習環境デザインについて探索するための学習環境をデザインしたい」ということでした。皆さまとの相互作用は、私にとってたいへん有意義な機会となりました。関わってくださった皆さまにとっても、私自身が環境として貢献できていれば幸いに思います。

参考文献

美馬のゆり,山内祐平(2005)「未来の学び」をデザインする:空間・活動・共同体.東京大学出版会

山本良太,伏木田稚子,香西佳美,村上唯斗,森裕生,中村謙斗,藤川希美(2024a)学習環境のデザインプロセスに関する探索.日本教育工学会2024年春季全国大会(第44回大会)講演論文集:3-4

山本良太,伏木田稚子,香西佳美,森裕生,村上唯斗,中村謙斗,藤川希美,大浦弘樹(2024b)学習環境デザインプロセスにおける教育者の行為の探究.日本教育工学会2024年秋季全国大会(第45回大会)講演論文集:13-14

山内祐平(2020)学習環境のイノベーション.東京大学出版会