日本教育工学会2025年秋季全国大会(第47回)の報告

日本教育工学会2025年秋季全国大会(第47回)の報告

大会企画委員会副委員長 今井亜湖(岐阜大学)

日本教育工学会2025年秋季全国大会(第47回)が,2025年9月27 日(土)から28日(日)の2日間にわたり,ウインクあいち(名古屋) にて開催されました.

名古屋大会は,岐阜大学の益子典文大会実行委員長,名古屋大学の柴田好章副委員長をはじめとする大会実行委員会の委員,および秋季大会企画委員会の委員の多大な協力により無事に会期を終えることができました.この場を借りまして御礼を申し上げます.

さて,秋季全国大会の一般研究発表は全てポスター発表となっております.名古屋大会は,英語発表を含む415件の一般研究発表が行われました.それに加えて,国際委員会企画のシンポジウム,編集委員会及び重点活動領域委員会企画のチュートリアルセッション,SIGセッション3件と国際委員会セッション,大会企画委員会企画のチュートリアルセッション及びトークセッションが行われました.なお,当日の模様については,各担当者による報告をご覧ください.

全国大会が春と秋の年2回開催になってから,秋季全国大会の参加人数は京都大会・仙台大会とも800名台で推移しておりましたが,名古屋大会はJR名古屋駅徒歩5分の好立地での開催ということで,予想をはるかに上回る1000名を超える参加者となりました.例年よりも広い会場を用意しましたが,各会場とも大変混み合う事態となってしまい,参加者の皆様には大変なご不便をおかけいたしましたことを心よりお詫びいたします.

名古屋大会では,参加費の早割価格の廃止,一般研究発表は対面のみの実施,プログラム集の代わりに大会日程や会場案内等を含む案内冊子の配布,コーヒーブレイクを兼ねた交流会やトークセッションの実施といった新たな試みも行いました.これについては,大会終了後に実施いたしましたアンケート調査の結果をふまえ,大会企画委員会で検討を重ねながら,次回以降の大会に向けて改善してまいりたいと思います.なお,今回のアンケート調査では,毎回参加されている会員の皆様の他,日本教育工学会の全国大会に初めて参加してくださった皆様からも貴重なご意見をたくさん頂戴いたしました.どうもありがとうございました.

次回の春季全国大会は,2026年3月7日(土)- 8日(日)に山梨大学で,秋季全国大会は2026年9月26日(土)-27日(日)に札幌市教育文化会館(北海道)にて開催されます.秋季全国大会は,観光地・札幌で開催されますので,宿泊先の手配をお早めにお願いいたします.

大会企画委員会では,全国大会が参加者の皆様の研究・実践の発表の場,会員の相互の交流を深める場になることを目指し,よりよい大会運営を目指してまいります.引き続き,ご参加くださいますよう,よろしくお願いいたします。

日本教育工学会2025年秋季全国大会(第47回)の御礼

大会実行委員会委員長 益子典文(岐阜大学)

日本教育工学会2025年秋季全国大会(第 47回全国大会)が,2025年9月27日(土),28日(日)にウインクあいち(愛知県産業労働センター)で開催されました.JR・近鉄・名鉄の名古屋駅からそれぞれ徒歩圏内の会場ということもあり,事前の参加申込は1,115名,会場にて参加いただいた方は,1077名と,多数の皆さんに参加をいただくことができました.また今回の大会からオンライン参加のオプションをやめ,じっくり議論のできる対面の大会といたしました.

会場全体は,2階の受付・大ホール,8階の一般研究・企業展示・休憩コーナー,9階の各セッション会場と,移動にご苦労をおかけしましたが,参加者の皆さんのご理解もあり,大きな混乱なく大会を終えることができました.

一般研究発表はポスター形式で行われ,計415件の発表が行われました.ポスターによる一般研究発表会場を,企業展示ブース・休憩コーナーを含む一つの大きなフロアに設定することができ,参加者の熱気であふれた会場とすることができました.また,1日目夕方には,この大きなフロアでウエルカムレセプションを開催,全国から集まった参加者の皆さんと直接交流することができたことも,実行委員会としては大変うれしいことでした.

1日目から2日目のトークセッション終了まで,とても多くの方にご参加いただき,大会実行委員棟として大変うれしく思っております。本当にありがとうございました.最後になりましたが,本大会を無事終了することができましたのは,学会役員,事務局,大会企画委員会,大会実行委員会のみなさまをはじめとして,多くの方のご協力,ご支援があったからです.心より御礼申し上げます.次回の全国大会で,またみなさまとお会いできることを楽しみにしております.

シンポジウム

大会1日目9月27日15:50~17:40に日本教育工学会シンポジウムが開催されました.

本シンポジウムは国際委員会が企画し,「新たな価値を創造する研究の国際化:はじめての国際会議から継続的な国際共同研究まで」をテーマに,これから国際会議で発表を目指す研究者から既に国際共同研究を展開している研究者まで,国際委員会が想定した3つの段階にある研究者に向けた報告を通じて,国際研究をより身近なものとして捉えていただくことを目的として実施しました.各段階の事例報告として,山梨大学の稲垣俊介氏,信州大学の村松浩幸氏,そして熊本大学の合田美子氏より具体的な実践事例,直面した課題,今後の展望について報告をいただきました.最後に総括コメントとして,ソウル大学校の鄭 仁星(ジョン・インソン)氏より専門的な視点からの助言をいただきました.

稲垣氏からは初めての国際会議の挑戦について報告がありました.高校教員から大学教員へと転身する中で,国際発信の必要性と英語の壁を実感されたことを背景に,IAFOR IICE2025での発表を決意され,生成AIを活用しながら発表原稿の推敲や発音練習,想定質問への準備を進められた過程を振り返り,約10か月前からの参加準備・資金計画から,6か月前の要旨作成・推敲,3か月前の発音準備,1か月前の生成AIの音声モードを活用した練習や想定質問への準備,1週間前の最終稿の音読確認,そして当日発表30分前の機器確認まで具体的な時系列で紹介いただきました.そして国際会議参加を通じて得られた経験知,今後の展望についてお話をいただきました.最後に,国際会議への挑戦にハードルを感じている学会員へ向けて,「AIの活用」,「発表の型を押さえる」,そして「仲間のつながり」によって敷居は下がること,恐れず挑戦してほしいとのエールが送られました.

村松氏からは,海外の日本人研究者と取り組む国際共同研究の実践について報告がありました.報告では,プログラミング教育を核とした創造的な授業を創るリーダーを育成する長野県教委主催の教員研修事業を起点に,村井裕実子氏(サイモンフレーザー大学)との国際共同研究の知見が共有されました.村井氏からのビデオメッセージでは,時差や距離があったとしても,協働実践を通して培われた信頼関係や共通の学びのビジョンが共同プロジェクトを円滑に進めていく要となることが報告されました.村松氏は国際共同研究を振り返り,「地元の実践」を起点に海外日本人研究者とつながることからでも国際研究は始められること,そして「共有できる問い」や「共感できる理念」を持つ相手と出会うことが重要であると指摘し,まずは小さくても実践を共にすること,特に若手研究者に向けて,完璧な準備よりも,一歩を踏み出す勇気が大切であると話されました.

合田氏からは,国際共同研究の出会いから継続・発展へとつなぐプロセスについて報告がありました.合田氏は,これまで取り組まれた国際共同研究のプロセスを「出会い」「信頼関係の構築」「継続の工夫」「発展への展開」の4段階で振り返り,本報告では特に国際共同研究の出発点の多様性を4つの事例から紹介されました.学生時代からの学友関係が基盤となり,授業参加や研究活動につながる事例や,国際学会・ワークショップでの交流,書籍プロジェクトを通じての研究活動,さらに研究滞在中での日常的な議論から発展した事例を紹介いただきました.継続と発展への工夫では,専門性の国際発信や対等な貢献姿勢,良好なコミュニケーション,資金獲得と相互交流の重要性が述べられました.また,制度や文化・環境の違い,倫理審査基準や予算調整,距離や時差の制約など,継続をする上での課題点も共有されました.最後に,国際共同研究は小さな出会いから始まること,信頼関係の積み重ねが重要であること,そして国内でも海外でも研究の基盤は同じであることが強調されました.

それぞれの話題提供の後には,鄭氏による総括コメントが行われました.鄭氏からは,各報告を踏まえて,6つの実践的な戦略やアイデアが提示されました.具体的には,「研究時間の確保」や「コミュニケーションの継続」,「自身の研究をグローバルな議論に結びつける」など,習慣づけを行うこと,「国際共同研究として意義のある研究を実施」し,研究成果の発信のために魅力的なタイトルや要旨を準備し,そして「効果的な共同研究者」を見つけ出し,批判的思考を持ちながら生成AIを適切に活用し,「研究成果の発信を戦略的に考える」ことの重要性をお話しされました.

そして最後に会場からの質疑応答の機会を設け,各登壇者から会場へ向けたメッセージをいただきました.本シンポジウム登壇者からの共通したキーワードは,「失敗を恐れず,第一歩を踏み出すことの重要性」,そして「人とのつながり,信頼関係を大切にすること」が国際共同研究の出発,継続に欠かせないものであるということでした.本シンポジウムにご登壇いただきました皆様,ご参加いただきました皆様に改めて御礼申し上げます.

文責:千葉美保子(甲南大学)

トークセッション

 大会2日目(9月28日),最後のプログラムとしてトークセッションが開催されました.

 本トークセッションは,ワークショップや学習環境デザインを専門とされている上田信行さん(同志社女子大学名誉教授,ネオミュージアム館長),絵本作家であり様々な国の文化の中で学習してきた経験をお持ちのキリーロバ・ナージャさん(コピーライター,絵本作家),学習環境デザインや学習科学を専門とされている美馬のゆりさん(公立はこだて未来大学教授)をお招きし,「好奇心はどう育てるのか・どう育つのか?ーUnlock your possibilitiesー」と題して実施されました.特に,学習環境の観点から好奇心をどのように育てたり,発揮させられたりするのか,各登壇者の経験に関するトークだけでなく,参加者間のインタラクションやワークショップありの,参加型でPlayfulな取り組みとして企画されました.

 セッション前半では,美馬さんより,現在の教室やそこでの活動が当たり前で普遍的なものではないことが,江戸時代の学習場面の描写との比較から示されました.そして,ナージャさんの幼少時代の経験をトーク形式で振り返り,私たちの「当たり前」が時代だけでなく国や文化,状況によって全く異なること,それらの違いを見つけ,驚きを感じたり,疑問に思ったりすることで,好奇心が育てられることを発見していきました.さらに,それらの経験からさらに深い好奇心が生み出されたり,「当たり前」をどんどん変えていくための実験を行ったりすることの面白さが共有されました.

 セッションの後半では,上田さんのコーディネートで,身近な環境の中でも様々な面白さを発見できる体験をする「影絵ワークショップ」が行われました.同じ空間であっても,環境を大きく変化させるために会場全体を暗転し,参加者は自分のスマートフォンのフラッシュライトを用いて身近なものを使ってテーマに関連した影をグループで作成しました.また,参加者が作成した制作物は,オンライン掲示板アプリ「Padlet」を用いて会場全体と共有され,他のグループの制作物から新しい発見や疑問につながる好奇心が生み出されていきました.

最後に,生成AIが広まり容易に答えが得られるなど,テクノロジーによる便利な状況において ,「わたしたちは何を手放し,何を手放さないのか」を考えることの重要性が確認されました.その一つが好奇心であり,好奇心を育てるためには,身の回りにある様々な環境を自分自身でデザインしていくことが大切であることが共有されました.好奇心は,時に個人に備わる資質や才能として捉えられることもありますが,このトークセッションを通じて,好奇心は環境中の様々なモノゴトへの気づきから生み出されること,また好奇心を生み出し,満たしていく環境を自らデザインしていくことの大切さを教えていただきました.お忙しい中,このような重要な気付きの機会を提供してくださいました上田さん,ナージャさん,美馬さんに対し,また積極的に本セッションにご参加くださいました皆さまに対し,この場を借りて御礼申し上げます。

文責 山本良太(大阪教育大学)

チュートリアルセッション

2025年度秋季全国大会のチュートリアルセッションは,ウインクあいち(名古屋)にて実施いたしました.

セッション1は、参加する方が大会を最大限に楽しみ、実り多い時間を過ごせるよう、「はじめの一歩」をサポートするためのチュートリアルとなりました。最初に山内学会長からのご挨拶で、日本教育工学会の会員が増えている等の現状を紹介し、歓迎の意を表しました。続いて、西森副会長より、全国大会全体の概要について詳しくご説明しました。その後、日本教育工学会全国大会に初めて参加する方から、本学会の学問領域に関する質問がありました。最後に、参加者の皆さん同士で簡単な自己紹介を通じて、お互いのバックグラウンドや興味を共有し、新たな繋がりを築くきっかけを作りました。最終的に300人を超える方にご参加いただきました。

セッション2では、「あなたの論文はこうして世に出る:日本教育工学会論文誌の編集の現場から」という題目で、編集委員会幹事団より論文の投稿から出版に至るまでの過程や留意点について説明されました。香西佳美先生(編集長補佐/立命館大学)の司会のもと、はじめに編集長の田口真奈先生(京都大学)から論文出版までのプロセスについて紹介されました。また、副編集長の瀬戸崎典夫先生(長崎大学)、担当理事の市川尚先生(岩手県立大学)、大浦弘樹先生(東京理科大学)、伏木田稚子先生(東京都立大学)から、論文投稿後の受理前チェックや査読のステップを踏まえて、論文の著者が投稿に際して留意すべき点について詳細な説明がありました。約300名を超える方にご参加いただきました。

セッション3は、「新しい重点活動領域『教育とAI』『学びの保障』の紹介」と題して開催し、300名を超える方々にご参加いただきました。日本教育工学会では、学会として重点的に取り組む領域を明確に示すことで、教育工学研究のプレゼンスを高め、社会への貢献をいっそう推進することを目指しています。こうした取り組みの一環として、今年度より新たに「教育とAI」「学びの保障」の2部会を立ち上げました。当日は、重点活動領域副委員長の池尻良平先生(広島大学)の進行のもと、まず益川弘如先生(重点活動領域委員長/青山学院大学)から、重点活動領域設置の趣旨と今後の展望について説明がありました。続いて、新設された2部会の部会長である中澤明子先生(教育とAI部会長/東京大学)および姫野完治先生(学びの保障部会長/北海道教育大学)より、それぞれの活動方針と抱負が発表され、今後の展開に向けた力強い活動宣言が行われました。

文責 倉田伸(長崎大学)

チュートリアルセッション1

チュートリアルセッション3

企画セッション

企画セッションでは,SIG委員会による3つの企画,国際委員会セッション,企業セッションが,9月27日(土)と28日(日)に行われました.

SIG委員会による企画として,SIG-IDセッション「インストラクショナルデザインの現在地」,SIG-TLセッション「個別最適な学びと授業研究/校内研修」,SIG-CLセッション「教員研修において学びの理論への理解を促す支援とは」,の3企画が行われ,講演やワークが展開されました.
国際委員会セッション「国際会議デビューを成功させる英語プレゼンテーション101~AECT国際会議で発表してみませんか?~」では,国際学会で初めて英語でプレゼンテーションを行う研究者向けにレクチャーやデモンストレーションが行われました。

企業セッションでは,ターンイットイン・ジャパン合同会社による企画「教育と研究の未来を拓く:生成AI時代のイノベーションとインテグリティ」と,ラインズ株式会社による企画「松本大学での実践報告:教養・SPI 2種のeラーニング教材を軸とした基礎学力の養成~入学から卒業・就職までの大学全過程での最適化を目指したIRデータ活用~」が行われました.

本大会における企画セッションは,一般研究発表と異なる時間帯で実施されたこともあり,すべてのセッションで多くの方にご参加いただき,活発な会となりました.

文責 今井亜湖(岐阜大学)

一般研究発表

一般発表では,合計 415件の発表を対面発表(ポスター形式)で実施しました.会場である「ウィンクあいち」においてポスター発表を2日間にわたって開催しました.今大会でも,ポスター会場内のパネル同士の間隔を広めに設置し,スペースに余裕を持たせた上,できるだけ多くの参観者が入れるよう工夫をした上で開催いたしました.近年では最多のポスター発表件数であり,会場は活気と熱気に包まれているように思えました.ポスター発表の入れ替えも発表者および参加者のご協力によって,スムーズに運営を行うことができました.

発表者・参加者のみなさまのご協力もあり,円滑に発表を行うことが出来ましたことを,改めましてこの場を借りて御礼を申し上げます.

文責 坂井裕紀(東京大学)・嶋田みのり(東北学院大学)・福山佑樹(関西学院大学)