日本教育工学会2026年春季全国大会(第48回)の報告

日本教育工学会2026年春季全国大会(第48回)の報告

大会企画委員会副委員長 稲垣忠(東北学院大学)

日本教育工学会2026年春季全国大会(第48回)は,2026年3月7日(土)・8日(日)の2日間にわたり,山梨大学にて開催されました.

本大会の運営をお引き受けくださった山梨大学の塙雅典委員長,岡村康弘・三井 一希副委員長をはじめとする,大会実行委員会の先生方,山梨大学の学生スタッフの皆さんの多大なるご協力を賜り,無事に会期を終えることができました.あらためて厚く御礼を申し上げます.

春期全国大会は口頭発表を主な発表形態としています.312件の一般発表のほか,99件の学生セッション発表,KSET(韓国教育工学会)からも多数参加いただいた21件のInternational Sessionを含め,合計432件の発表および質疑が行われました.また,チュートリアルセッション,2件の自主企画セッション,2件の企業企画セッション,4件のSIGセッション,「教育とAI」「学びの保障」の2部会による重点活動領域セッションが開かれました.

学生セッションについては,学生の優れた研究とその成果の発表を奨励することを目的とした,「学生セッション優秀発表賞」を設定しており,10名の学生を表彰しました.受賞された皆様,おめでとうございます.

本大会では,2日間で922名の方々にご参加いただきました.改めまして,ご参加・発表いただいた皆様,協賛企業の皆様に感謝の意を表します.

次回2026年秋季全国大会は2026年9月26日(土)・27日(日)に札幌市教育文化会館(北海道)で,2027年春季全国大会は2027年3月6日(土)・7日(日)に関西学院大学で開催されます.大会企画委員会では,参加者の皆様の研究・実践の発表の場となると同時に,会員の皆様の交流を深める場にもなることを目指し,よりよい大会運営を目指して参ります.是非,引き続きご参加くださいますよう,よろしくお願いいたします.

日本教育工学会 2026年春季全国大会(第48回)の御礼

大会実行委員長 塙 雅典(山梨大学)

日本教育工学会2026年春季全国大会(第48回全国大会)が,2026年3月7日(土)・8日(日)の2日間にわたり,山梨大学(甲府キャンパス)を会場として開催されました.両日ともに澄みわたる青空に恵まれ,キャンパスからは雄大な富士山を望むことができるなか,全国各地より多くの皆さまにご参加いただき,無事に全日程を終えることができました.この場をお借りして,ご参加くださった皆さま,ならびに大会の開催を支えてくださったすべての関係者の皆さまに,心より御礼申し上げます.

予測困難で不確実な時代において,教育工学は単なる教育手法や技術の改善にとどまるものではなく,「どのような社会を見据え,どのような人を育てていくのか」という根源的な問いに向き合う学問分野として,その意義を一層強めているのではないでしょうか.本大会が,理論と実践の往還を通じて学びの設計や学習環境 lmを問い直し,新たな知見や視点を生み出す場となっていれば幸いに存じます.

本大会では,一般研究発表をはじめ,学生セッション,SIGセッション,企画セッション,チュートリアルセッションなど,多彩なプログラムが展開されました.研究者と実践者が分野や立場を越えて集い,最新の研究成果や教育実践の知見を共有するとともに,活発で建設的な議論が各会場で交わされていたことを,大変うれしく思っております.

また,大会初日の夕刻にはウェルカムレセプションを開催し,山梨大学ワインなど地域ならではの味覚を楽しみながら,会員相互の交流を深めていただく機会となりました.富士を望む甲斐の地において,多くの皆さまが旧交を温め,新たなつながりを築かれていた様子を拝見し,本大会が知的交流のみならず人的交流の場としても実りある時間となったことを,大変喜ばしく感じております.

改めまして,本大会の開催にあたりご尽力くださいました学会役員,大会企画委員会,大会実行委員会,学会事務局の皆さま,ならびに関係各位のご支援とご協力に深く感謝申し上げます.ご参加いただいた皆さまにとって,本大会が今後の研究や実践につながる有意義な機会となっておりましたら幸いです.次回大会において,再び皆さまとお目にかかれますことを心より楽しみにしております.

チュートリアルセッション

チュートリアルセッションは,「JSETゆる交流会:わたしの一番話したいところ」と題し,3月7日(土)9:00〜9:30の時間帯で開催されました.本セッションは,全国大会への参加経験が少ない参加者を主な対象としています.今大会では,参加者の皆さまの「知り合うきっかけをつくる」ことを目的としました.

まずセッション冒頭で,西森年寿学会副会長より本学会の概要や諸活動について説明がありました.次に,参加者の皆さまに6つのトークテーマから1つ選んでいただき,そのテーマで集まった5人程度のグループで,20分ほど交流を深めていただきました.テーマは,修士/博士課程での過ごし方,職場での研究の進め方,若手から中堅へのステップなどでした.すべてのグループで,お名刺交換や情報交換が盛んに行われていました.企画の最後には,本大会のみどころについてご紹介しました.

本大会最初のセッションでしたが,約130人の方にご参加いただきました.ご参加いただいた皆さま,誠にありがとうございました.

(文責:古賀竣也,石川奈保子)

ウェルカムレセプション

ウェルカムレセプションは,大会初日の3月7日(土)18:00〜19:30に山梨大学の学生食堂で開催されました.多くの皆さまにご参加いただき,終始和やかな雰囲気のなかで活発な交流が行われました.

会場では,山梨大学ワインをはじめ,信玄餅など山梨ならではのご当地の味覚をご用意し,参加者の皆さまに地域の魅力を感じていただく機会となりました.とりわけ信玄餅については,その独特の食べ方を紹介するミニレクチャーも行い,初めて体験される方々からは驚きや歓声が上がるなど,会場は大いに盛り上がりました.こうした場面をきっかけに参加者同士の会話も自然と広がり,研究や教育実践について語り合う姿が各所で見られました.

また,山梨大学教育学部の学生によるピアノと声楽のリサイタルも披露されました.学生たちの伸びやかな演奏と歌声が会場に心地よい彩りを添え,参加者の皆さまにとって印象深いひとときとなったのではないかと思います.学生にとっても,多くの研究者・実践者の前で演奏を披露する貴重な機会となりましたことに,あらためて感謝申し上げます.

地域の食文化や学生の活動にも触れていただきながら,研究分野や所属機関の垣根を越えた交流が生まれたことは,本大会における大きな成果の一つであったと感じております.レセプションの開催にあたりご協力いただきました関係各位に,心より御礼申し上げます.

(文責:三井一希)

インターナショナルセッション

インターナショナルセッションでは21件の発表申し込みがあり,5つのセッションに分けて発表を行いました.昨年の4件から大幅増となりました.その原因として,25年秋大会で開催された国際委員会によるセッション「国際会議デビューを成功させる英語プレゼンテーション101」が大きく注目を集めたことがあります.英語による発表にチャレンジする機会の1つとして今後もぜひ参加していただければと思います.

もう1つは,KSET(韓国教育学会)との相互交流として発表を募集したことです.計14件の研究発表が行われました.また,発表者・一般参加者含めて23名のKSET会員が大会に参加されました.おかげさまで,どのセッションも盛況でした.今後も,海外の学会との学術交流の一環として,全国大会のInternational Sessionを充実させていきます.セッションに参加された皆様,KSET,JSET国際委員会の皆様に改めて感謝申し上げます.

なお,日本語を母語としない参加者向けの学会の参加,申し込み,日程等に関するアナウンスが十分ではない課題があります.今後,Webサイトの充実を進めていく中で改善を図っていきます.

(文責:稲垣忠)

学生セッション

春季大会では,教育工学に関わる若手育成,若手研究の奨励を目的として,学生セッションを実施しています.4年目をむかえる本大会では,99件の登録があり,27セッションでの開催となりました.

学生セッションでは,セッションごとに全体ディスカッションの時間が設けられましたが,いずれの会場でも活発な議論が交わされ,交流がおこなわれました.発表者のみなさま,座長をご担当いただいた皆さま,発表を聞きに来てくださった皆さま,ご協力いただき誠にありがとうございました. 

特に優れた発表に対して授与される「学生セッション優秀発表賞」には,以下の10件の研究発表が選ばれました.受賞者のみなさま,おめでとうございます.

  • 地方の併設型中高一貫校の高校生を対象とした生成AI に関わるメディア・リテラシーの実態の探索的検討/上田 妃菜,助田 敦生,森下 蒼生,佐藤 和紀(信州大学)
  • 画像生成AI を用いた防災コンテンツの防災教育応用に関する統合的分析/川口 夕璃,内山 慎太郎,飯田 祐,森田 裕介(早稲田大学)
  • 高校生の探究学習における大学生によるオンラインファシリテーション活動の特徴/小林 真緒子,室田 真男(東京科学大学)
  • 教員養成課程の学生を対象とした模擬授業の準備における援助要請と情報探索の利用傾向の類型化の試み/小松崎 晴菜,八木澤 史子(千葉大学)
  • LLM による文章生成の過程を可視化する教材を用いた授業の試行/佐藤 彩美,板垣 翔大(宮城教育大学),手塚 和佳奈(帝京大学可児小学校),佐藤 和紀(信州大学)
  • 高等学校数学科における他者のノートテイキング状況を可視化するシステムとガイド付きノートの関係/田中 翔大,吉田 咲良,近藤 孝樹,渡辺 雄貴(東京理科大学)
  • 学習者の認知負荷低減を目指したLLM フィードバックの階層的提示手法の提案/寺岡 颯哉(東京理科大学大学院),古池 謙人,赤倉 貴子(東京理科大学)
  • 対面議論を支援するLLM エージェントのプロンプト時系列変化と役割期待に基づく評価/前田 祥,永田 丈弥,美馬 のゆり(公立はこだて未来大学)
  • 高大接続型協働学習プログラムにおけるファシリテーターの言動が高校生の探究心に与える影響/吉岡 絵珠音,後藤 崇志(大阪大学)
  • 英語スピーキングにおける説明方略訓練を目的とした体系的な学習システムの開発と評価/吉川 果那(東京科学大学),仲谷 佳恵(大阪大学),室田 真男(東京科学大学)
    (五十音順)

(文責:前田菜摘,中澤明子)

重点活動領域セッション

重点活動領域セッションは,3月8日(日)15:25〜16:55の時間帯で開催されました.重点活動領域とは,学会として重点的に取り組んでいる領域を社会に示し,学会としてのプレゼンスを高め,社会に交換することを目指しています.第3期は,「教育とAI部会」,「学びの保障部会」の2つの部会を新たに立ち上げ,活動がスタートしました.今回のセッションはその最初の報告と議論の場となりました.

教育とAI部会では,教育工学研究における「教育とAI」の現在地の確認と題して5つの観点から教育とAIに関する研究レビューが報告されました.その5つとは,日本教育工学会でのAI関連研究,人工知能分野における生成AIを利用した教育・学習支援に関する研究,初等教育でのAIの活用に関する研究,AI倫理に関する教育研究,AIと工事施工としての批判的思考に関する研究でした.報告後に,近場の参加者同士で議論を行った上で,全体で活発な質疑応答が行われました.

学びの保障部会では,教育工学研究における「学びの保障」と題して4つの観点から学びの保障に関連した取り組みが発表されました.その4つとは,へき地・離島における学びの保障,不登校支援における学びの保障,外国籍児童生徒の学びの保障,学校における学びの保障でした.こちらの部会においても発表後には,近場の参加者同士で議論を行った上で,全体で活発な質疑応答が行われました.

(文責:益川弘如)

SIGセッション

SIGセッションでは,SIGごとに教室に分かれ,それぞれのテーマに沿った発表やワークショップ,活発な討論が行われました.

「SIG-ID インストラクショナルデザイン」では,「インストラクショナルデザイン(ID)を活用して研究してみませんか?」をテーマに,日本における近年の研究動向の概観と,具体的な実践論文の検討・議論を行うワークショップが実施され,大学・学校・企業などの幅広い領域における教育改善と研究の活性化について議論が交わされました.

「SIG-CL 協調学習・学習科学」では,「学習科学ハンドブック第三版を読み解く」と題し,2026年9月に刊行予定の翻訳本に携わった先生方をお迎えしました. 「第2章 学習科学の基礎」「第3章 足場かけ」「第10章 協調の分析」の各章の紹介とともに,わが国における協調学習・学習科学研究のあり方について,専門的な見地から議論が展開されました.

「SIG-SE 特別支援教育」では,「合理的配慮の実装と展望」をテーマに,中学校・高校・大学の各段階における実践事例が話題提供者から報告されました.発表後にはフロアからの質問に対する応答が行われ,教育現場における合理的配慮の実装や判断の在り方について意見交換がなされました.

「SIG-MC マイクロクレデンシャル」では,「オープンバッジを活用した e ポートフォリオの可能性」をテーマに,マイクロクレデンシャルの特徴と可能性を体験するワークショップが行われ,参加者は実際にオープンバッジを用いた学習ポートフォリオの作成を通じて,その具体的な活用方法について理解を深めました.

(文責:重田勝介)