No.292
No.292
日本教育工学会ニューズレター 2026年02月10日発行

【特集記事】国際委員会の取り組みについて
国際委員会委員長 望月俊男(早稲田大学)

 「国際委員会」(以前は国際交流委員会という名称でした)とは、いったい何をしている委員会なのだろう?と思われる方は多いのではないでしょうか。私自身も、昨年春に委員長を拝命するまでは、まさにその一人でした。「海外との交流なんて自分には関係ない」「英語も苦手だし……」と思われる方もいらっしゃるかもしれません(私も若い頃はそうでした)。しかし近年では、学問領域の国際化が進み、海外の研究論文を参照せずに研究を進めることが難しい場面も増えています。より広い観点でみれば、日本の教育工学の成果を国際的に発信し、世界の教育工学の発展に貢献するということは、わが国のプレゼンスを高める上でも重要です。まずは友人関係からでも、国際的なつながりを持つことはとても大切になってきていると思います。
 国際委員会はもともと、海外学協会との組織間交流を目的とした委員会でした。しかし山内会長の方針により、今期は特に、会員同士の実質的な国際交流を推進することを重視して活動しています。
 そこで、これまでの海外学協会との交流事業に加えて、以下のような取り組みを行いました。

(1) シンポジウムの開催
 2025年秋季全国大会において、「新たな価値を創造する研究の国際化:はじめての国際会議から継続的な国際共同研究まで」というシンポジウムを開催しました。この企画は、2024年度から構想されていたものです。初めての国際会議発表から、国際共同研究をどのように始め、発展させていくかまで幅広く扱う、大変充実した内容となりました。関係の先生方には多大なるご協力をいただきましたこと、心より御礼申し上げます。

(2) 英語プレゼンテーションチュートリアルセッションの開催
 同じく2025年秋季全国大会では、国際委員会メンバーの発案で、「国際会議デビューを成功させる英語プレゼンテーション101~AECT国際会議で発表してみませんか?~」というチュートリアルセッションを開催しました。短時間ではありましたが、英語プレゼンテーションにおける重要なポイントを学んでいただく機会となり、87名の方にご参加いただきました。
 このような企画に加え、海外学協会との交流事業を会員レベルで行えるよう、各学協会と連携して取り組んでおります。本学会は現在、以下の3つの海外学協会と連携協定を結んでいます。
 AECT (Association for Educational Communications & Technology)は、アメリカを代表する教育工学系学会であり、『Educational Technology Research and Development』などの学術誌を刊行しています。本学会とは協定を結んでおり、2025年春にはオンラインで「AECT-JSET Meet & Greet」という交流イベントを開催しました。また秋に行われるAECT Convention(2026年はシカゴ開催)では、JSET Sessionも実施しています。一般のJSET会員の皆さまにもぜひご参加いただければ幸いです。
 CAET(China Association for Educational Technology)は、中国の教育工学協会で、日本教育工学協会(JAET)に近い組織です。2年に1回、日中教育工学フォーラムを互いの国で交互に開催することになっており、2025年にはコロナ禍を経て8年ぶりに第8回フォーラムを日本で開催する予定でした。残念ながら現下の情勢により中止を余儀なくされましたが、次回の機会には会員同士の相互研究交流を実現できればと考えております。
 KSET(The Korea Society for Educational Technology)は、韓国教育工学会です。コロナ禍で交流が滞っていましたが、2025年にKSETから学術大会における学生発表等の招待を受け、JSET会員2名が発表しました。そして、2026年のJSET春季全国大会では、JSETからKSET側へ発表招待を行い、その結果、International Sessionで合計15件の発表を申し込んでいただきました。JSET会員の皆さまには、ぜひInternational Sessionにご参加いただき、質疑応答を通じた交流を深めていただければ幸いです。 
協定を結んでいるのは現在これら3つの海外学協会ですが、将来的にはヨーロッパや東アジア諸国との交流もさらに進んでいくのではないかと期待されます。
会員の皆さまの個人的な交流を起点として、国際的なつながりをより活性化できる施策を進めていきたいと考えております。ぜひ会員の皆さまには国際委員会をご活用いただくとともに、お力添えを賜れますと大変ありがたく存じます。
 どうぞよろしくお願いいたします。


【特集記事】大会企画委員会について
大会企画委員会委員長 高橋純(東京学芸大学)

 大会企画委員会は、年に2回の全国大会が円滑に、そして学術的な高まりが得られる場となるよう、開催地の決定からプログラム構成まで、大会全般の企画・運営を担っています。現地実行委員会の先生方と二人三脚で、会員の皆様一人一人が主役となれる環境づくりに努力をしております。

 現在の体制は、西森年寿副会長(大阪大学)のもと、以下のメンバーで運営しています。
 春季大会:稲垣忠副委員長(東北学院大学)、三井一希副委員長(山梨大学)、時任隼平幹事(関西学院大学)、大﨑理乃幹事(島根大学)、および11名の委員。
 秋季大会:今井亜湖副委員長(岐阜大学)、大久保昇副委員長(内田洋行)、杉浦真由美幹事(北海道大学)、山本良太幹事(大阪教育大学)、および9名の委員。

 全国大会には、春と秋で異なる意図があります。
 「春季大会」:口頭発表や学生セッションを中心とした「ゆったり発表」
 「秋季大会」:ポスター発表やチュートリアルを通じた「じっくり議論」
 いずれも発表申込締切は開催の約2ヶ月前です。ぜひ、皆様の研究成果を携えてご参加ください。
 また、大会を支えてくださる企業展示・広告へのご協力も、心よりお待ちしております。

 次回の春季大会では、望月俊男国際委員会委員長らとの連携により、韓国教育工学会(KSET)からも多数の申込をいただきました。国際的な広がりを見せる新たな試みに、委員会としても身の引き締まる思いです。
 一方で、大会が近づくにつれ、多くのご質問やご要望をいただきます。委員一同、一つひとつ丁寧に対応しておりますが、限られたリソースの中ですべてのご期待に沿えないこともございます。何卒、ご理解をいただけますと幸いです。

 「全国大会を作る」という仕事は、どこか学園祭を作り上げていくような楽しさがあります。しかしその裏で、特に副委員長や幹事の先生方は、年間を通じて多くの実務に追われています。 本来、日本の教育工学を牽引すべき優れた研究者たちが、一般的な事務作業にも忙殺されている現状は、わが国の研究進展という観点から見れば大きな損失ではないか――。 約4,000名の会員を擁する学会として、もはや「有志の熱意」だけで運営するフェーズは過ぎているのかもしれません。今後はイベント会社等の包括的な活用など、プロの力を借りながら、研究者が研究と議論に集中できる持続可能な運営体制を模索すべき時期に来ていると個人的には感じています。

 それでは、2026年、山梨と札幌でお会いしましょう。
 色々と課題も綴りましたが、「最高の大会を皆様にお届けたい」という一心からです。私たちは、皆様の活発な議論が交わされる会場を想像しながら、日々準備を進めています。
 まずは春、桃の花が咲き始める山梨で。そして秋、爽やかな風吹く札幌で。
 大会企画委員会一同、皆様とお会いできることを心より楽しみにしております。

(大会予定)
春季大会
山梨大学(甲府キャンパス)
2026年3月7日(土)〜8日(日)

秋季大会
札幌市教育文化会館
2026年9月26日(土)〜27日(日)


【特集記事】重点活動領域 学習環境部会の取り組みについて
山本良太(大阪教育大学)

 構成主義に基づく学習観では、知識を状況から切り離された実態として捉えるのではなく、学習者と環境との相互作用を通じて構成されるものであると考えます。すなわち、学習において、学習者と環境の在り様は不可分な関係にあります。こうした構成主義の考え方が日本教育工学会でも広く共有されるに従って、教育のデザインの対象も教授だけでなく、環境へと拡張しています。

 このような背景のもと、重点活動領域の第2期学習環境部会では、特に「教員はどのように学習環境をデザインしているのか?」という問いを立て、2年間活動してきました。構成主義の考え方に従えば、教員のデザインという行為もまた、環境との相互作用しながら、またそれを独創的な形で制御しながら達成されていると考えられます。しかしながら、実践報告や論文という形で学習環境デザインが知見化されるなかで、その構築の具体的なプロセスが不可視化されてしまいがちになるのではないか、という課題意識がありました。そこで私たちは、特に教員の学習環境デザインのプロセスに着目し、初等中等教育や高等教育のフィールドで学習環境デザインに取り組む実践者を対象としたインタビュー調査および分析と仮説生成、そこで得られた知見の共有を行ってきました。

 期間の前半では、特に美馬・山内(2005)および山内(2020)が提示する、学習環境デザインの4側面(空間・人工物・活動・共同体)を枠組みにして、教員がどのように4側面を統合しながら学習環境をデザインしているのかを調査しました。その結果、教員は自身の経験や教育的信念に基づく「基点」を構築し、またそれらから現状を捉えたデザインの「起点」があることが分かってきました。期間の後半では、前半の調査から得られた知見を手掛かりに、よりミクロに、教員は自身の経験や教育的信念を持ちながらも、どのように学習者を含む環境と相互作用しながら学習環境をデザインしているのかを調査しました。特に、環境をどのように「観察」を通じて捉え、それを「分析」し、「デザイン」へと落とし込んでいるのかに着目しました。暫定的な結果として、教員は環境的な制約の中で、しかしながら観察と分析に基づくよりよいデザインのために環境を拡張させながら、試行錯誤の中でそれを達成していることが分かりました。前半と後半の調査の暫定的な結果は、それぞれ2024年春季全国大会、2024年秋季全国大会の企画セッションにて共有してきました(山本ほか 2024a、山本ほか 2024b)。今後、これらの調査を改めて精査するとともに、たどり着いた仮説を論文として共有できるよう、引き続き取り組んでまいります。

 最後に、当部会の調査に協力くださった先生方、全国大会の企画セッションにてフィードバックをくださった皆さま、当部会の活動を支えてくださった益川委員長、稲垣副委員長、幹事の先生方、そしてともに活動に取り組んでくださった部会メンバーに感謝を申し上げます。私が部会長をお引き受けする際に考えたことは、「学習環境デザインについて探索するための学習環境をデザインしたい」ということでした。皆さまとの相互作用は、私にとってたいへん有意義な機会となりました。関わってくださった皆さまにとっても、私自身が環境として貢献できていれば幸いに思います。

参考文献

美馬のゆり,山内祐平(2005)「未来の学び」をデザインする:空間・活動・共同体.東京大学出版会

山本良太,伏木田稚子,香西佳美,村上唯斗,森裕生,中村謙斗,藤川希美(2024a)学習環境のデザインプロセスに関する探索.日本教育工学会2024年春季全国大会(第44回大会)講演論文集:3-4

山本良太,伏木田稚子,香西佳美,森裕生,村上唯斗,中村謙斗,藤川希美,大浦弘樹(2024b)学習環境デザインプロセスにおける教育者の行為の探究.日本教育工学会2024年秋季全国大会(第45回大会)講演論文集:13-14

山内祐平(2020)学習環境のイノベーション.東京大学出版会
ショートレター
論文投稿締切:2026年4月1日(水)17時00分
詳細はこちら
2026年春季全国大会(第48回)
開催日:2026年3月7日(土)〜8日(日)
開催場所:山梨大学(甲府キャンパス)
詳細はこちら
日本教育工学会第42回代議員総会
日時: 2026年3月6日(金) 16:00~17:00
場所: 「山梨大学(甲府キャンパス)Y−12教室」と「Zoomを用いたオンライン会議」
詳細はこちら
行事予定
全国大会

開催日
2026年09月26日〜2026年09月27日
開催場所
札幌市教育文化会館
研究会

開催日
2026年05月23日
開催場所
崇城大学池田キャンパス(熊本市)
研究会

開催日
2026年12月19日
開催場所
オンライン(Zoom)
研究会

開催日
2026年10月17日
開催場所
岡山大学津島キャンパス(岡山市)
研究会

開催日
2026年07月11日
開催場所
神戸大学鶴甲第一キャンパス(神戸市)
開催報告
全国大会:2025年秋季全国大会(第47回)
2026/01/11
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