ワークショップ ※プログラムは暫定版です

  ワークショップは大会企画委員会が中心となって開催します.このワークショップは,参加者が設定した教育工学に関連するテーマについてインフォーマルに語りあう場です.実践は進んでいるものの研究として認識されていない問題や,新しい情報技術の教育利用などの萌芽的な研究について議論を行っていただくことを考えております.
 ワークショップは主催者主導で進行していただきます.また,予稿の用意は必要ありません.なおプログラム集には,ワークショップテーマ名・主催者/共催者名・概要が掲載されます. ワークショップ参加者は各ワークショップ会場の受付で記名をお願いします.ワークショップのみに参加者される方は大会参加費は無料です.
 なお,このワークショップを機に主催者と参加者との交流が促進されるよう,参加者名簿を各ワークショップ主催者にお渡しすることにしていますので,それをご承諾の上でご参加ください.

W01 比較授業分析による教育技術とその効果の顕在化
   −マレーシアにおける数学授業の分析−

9月20日(金)17:00〜19:00  会場:学生会館/生協
柴田好章(名古屋大学),
サルカール アラニ モハメッド レザ(帝京大学)

 本ワークショップは,参加者が共同して授業分析を行う。 分析対象授業はマレーシアの高校1年の数学の授業であり,「集合」の単元である。 生徒達は,和集合,積集合,補集合ならびにそれらの組み合わせにおいて,記号による表記と,図形の領域の関連を学ぶ。 この授業において,ICTをはじめとする教師のさまざまな教育技術が,どのように複合的に授業の中で用いられているかを明らかにする。 ビデオを中心に授業記録をもとに,授業過程を分節化し,分節ごとの教育技術の特徴を明らかにする。 そして,生徒の学びの実態からその効果を明らかにする。 そして,マレーシアの授業から得られた視点をもとにして日本の教育技術のあり方も議論したい。

W02 実践をいかに記述・記録するか

9月20日(金)17:00〜19:00  会場:学生会館/生協
浦野弘(秋田大学),益子典文(岐阜大学),
谷塚光典(信州大学),島田希(高知大学),姫野完治(秋田大学)

 教育研究者が学校現場で行われる授業にいかにアプローチするかといったシンポジウムやラウンドテーブルが各学会で行われてきた。 そこでは,各々の研究者や実践者がどのように実践に関わり,また授業を記述・記録しているのか,あるいはそれを指導助言に生かしているのかが検討されてきている。

 本ワークショップでは,同日に秋田大学の臨床型模擬授業教室で実施された授業に基づき,研究者,実践者,実務家教員,指導主事,学生・大学院生等が,具体的にどのように実践を記述・記録したのか,そこからどのようなアウトプットが生まれるのかなどについて検討する。 参加を希望する方は,14時からの公開授業を参観した上で,記述・記録したものを持参していただきたい。 この公開授業は,秋田大学教育文化学部附属小学校の児童と教諭を大学内の模擬授業教室に招いて行う。

W03 続・新しい学びの評価:未来の教育をデザインするための研究方法論

9月20日(金)17:00〜19:00  会場:学生会館/生協
益川弘如(静岡大学),山口悦司(神戸大学),望月俊男(専修大学),
北澤武(東京未来大学),大島純(静岡大学),大島律子(静岡大学)

 デザイン研究は,学びの革新を目指して,学習環境を設計・実践し,分析・評価・改善を繰り返しながら,設計指針を確立していく研究方法論です。 デザイン研究における重要な課題の一つは,革新的学びの診断的評価方法の確立です。 本ワークショップでは,昨年度に引き続き,授業における子どもたちの発話記録を,複数の方法・ツールを用いて解釈をし,その解釈結果を比較吟味する活動を通して,新しい学びを評価するためのデータ収集(観察)および考察(解釈)について検討していきます。 今回はジグソー学習活動の分析方法に焦点を当て,参加者のグループワークを通して進めていきます。

W04 テストを短縮するツール:LRT-CATの開発と今後の課題

9月20日(金)17:00〜19:00  会場:学生会館/生協
秋山實(東北大学大学院),
平田昌子(第一工業大学),岩下智彦(国際交流基金客員研究員)

 潜在ランク理論は,項目応答理論が適用できない小規模な領域でも適用可能な新しいテスト理論である。 この理論の応用としてコンピュータ適応型テストがある。 秋山は,Moodleのプラグインとして,この理論に基づくコンピュータ適応型テストを実行するLRT-CATモジュールを開発した。 このモジュールを使って日本語語彙サイズテストを実施した結果,5つのランクに分ける場合,11%程度の誤差で従来150問のテストであったものを14問から42問に短縮できることが分かった。 本ワークショップでは,LRT-CATの仕組み,これを使って従来のテストを半分から3分の1程度に短縮する手順とガイドラインを示し,英語教育,情報教育,数学基礎教育などの領域での適用可能性,そのために解決すべき課題について参加者と議論する。

W05 認証評価対応のための教育工学

9月20日(金)17:00〜19:00  会場:学生会館/生協
辻高明(秋田大学 評価センター)

 秋田大学は今年度,7年に1度の認証評価を受審する。 認証評価では,学生の受入,教育内容及び方法,学習成果,教育の内部質保証システム,学生支援など,大学教育全般に関わる多様な基準・観点について,全学的にデータ,情報を収集し,それらの分析を通して,優れた点,改善を要する点を見出す作業が求められる。 秋田大学では平成24年度から評価センターが中心となり各部局と連携を図りながら,受審に向けて上記の作業を一年余りに渡り進めている。 これまでの本学会の全国大会におけるシンポジウムやワークショップでも,IR(Institutional Research)など,大学の評価活動,すなわち大学の教育,研究,業務に関する多様で大規模なデータの収集・分析活動と教育工学の関係について議論が行われてきた。 認証評価が第2サイクルに入り,25年度,ないしは26年度に受審する大学も多い中で,特に教育の自己点検・評価である認証評価への対応に教育工学の知見や方法がどのように寄与できるかについて議論したい。

W06 教育情報化の歴史ワークショップ −私的履歴から史的理解へ−

9月20日(金)17:00〜19:00  会場:学生会館/生協
林向達(徳島文理大学)

 「教育の情報化」は学校環境のICT対応の通じて情報教育や教科等の指導,校務の効率化を目指すものとして取り組まれてきました。 初等中等段階においては,コンピュータ教育元年と呼ばれた1985年から現在まで様々な試みが繰り返されてきましたが,必ずしも学校の日常に組み入れられたとは言い難い状態です。

 このような事態は,ICTを活用している社会と学校の乖離が増すばかりでなく,大学教育の高度化や教育工学研究の前進にも良い影響を与えません。

 その時々の機器や技術に踊らされないためには,歴史的な積み重ねの共有と議論が不可欠ですが,教育の情報化は多様な試みが散在しながら進行したため,その記録は,関係者の履歴としては残されていますが,歴史として蓄積されていないのが実情です。

 本ワークショップは,散逸しつつある教育情報化の記録や記憶を集める手がかりとして,参加者の私的履歴を持ち寄ってもらうことから始め,年表との比較作業や参加者同士の語らいを通して,教育情報化の史的理解へと繋がる契機をつくることが目的です。