本大会では公募で寄せられたテーマを含めて大会企画委員会で検討した結果,次の8件のテーマを予定することになりました.発表希望者にプロポーザルを提出していただき,大会企画委員会が発表の可否を決定いたします.各課題について十分に討論することを目的としていますので,発表者は,発表だけで退席することなく,最後の総合討論に参加しなければなりません.この点,ご留意下さい.
コーディネータ | 竹中真希子(大分大学),飛弾信崇(ベネッセコーポレーション) |
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人の学習は現実世界で営まれるものであり,テクノロジーがそれをいかに支援できるのかを追究することが,教育工学の課題でもある.本セッションでは,こうした視点から追究された,システム開発や新技術の教育利用に関する提案を募集する.テクノロジーを用いた学習環境には,次のような領域を例として挙げることができる.e-learning,m-learning,仮想現実,拡張現実,モバイルコンピューティング,ユビキタスコンピューティング,ウェアラブルコンピューティング,ロボット,エージェントテクノロジーなどなどである.これらの環境(これ以外でも)が,現実世界で営まれる人の学習をいかに支援できるかについて,特に,現在の学習環境を越えたその先の学習環境を提案する研究発表を軸にしながら議論を行う.
コーディネータ | 大島 純(静岡大学),加藤 浩(放送大学), 舟生日出男(広島大学) |
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近年,Web2.0サービスやCSCLシステムを利用した協調学習活動が盛んになっている.このような学習をデザインする際には,道具,目標,イベント,制度,ルール,組織など様々な要素の膨大な組合せの中から取捨選択しなければならない.その際の判断基準となるのがデザイン原則である.デザイン原則は,人の学びを捉えた学習理論から導き出され,具体的な個々の教育実践事例の分析からその原則の妥当性や一般性を検証する概念であり,その確立が重要かつ急務である.本課題研究では,広く協調学習支援システムの開発や教育実践事例の報告を対象とするが,必ず新しいデザイン原則の提案や既存のデザイン原則の検証・検討を含むことを求める.それらのデザイン原則を異なる実践研究の間で吟味・共有することを通して,一般性を高める議論を行う.
コーディネータ | 栗山 健(学研教育出版),山田政寛(金沢大学) |
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近年,病院や企業を中心に「組織・職場における人々の学習をいかに組織化するか」に関する研究が注目を浴びている.それは仕事に必要な知識や技術を,様々な他者の支援やコミュニケーションの中で,仕事の経験を通じて学ぶことを意図したものであるが,仕事の経験のみならず,顧客,上司,同僚,後輩など職場内外の人間関係,さらに異業種交流会といったインフォーマルな場での人間関係も,学習に影響を与える.しかし,このような組織における学習について,経営の観点では研究や調査が進められてきたが,教育・学習の観点ではまだ研究が始まったばかりであり,研究知見の蓄積,情報の共有,議論もまだ十分ではない状況にある.本セッションでは,組織における人々の学習・成長,および,組織内の知識獲得,知識共有,知識の制度化,学習棄却,組織社会化に関する研究に関する議論を行いたい.企業,病院,はてには大学や学校において(大学や学校等の教育機関も組織のひとつである)どのように人材育成を進めればいいのか,業務能力向上に資する組織要因は何なのか.組織の境界を越えた学習(越境学習論)など,組織と学習に関する幅広い研究の応募に期待する.
コーディネータ | 柴田好章(名古屋大学),田中博之(早稲田大学) |
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近年,教職大学院の設置,教職実践演習の導入などの教師教育における改革が進行してきたが,現在では,さらに抜本的な教員養成制度の改革が論議されている.教育工学としても,これからの教師に求められる力量をどのように育成するかが,喫緊の研究課題である.また,各学校現場における力量形成の要である現職教育・教員研修においては,日本の長年の授業研究の伝統と成果に海外からの注目が集まっている一方で,真に教師の力量形成に結びつく授業研究を定着・発展させていくことが重要な課題になっている.こうした問題意識から本課題研究では,授業研究を通した教師の力量形成のあり方を明らかにしたい.大学での教師教育への授業研究のさらなる導入と評価・改善に関する研究や,学校での持続可能な授業研究サイクルの構築を目ざした研究,またそれらを支える授業研究のツールの開発,教師の成長モデルや研修方法の提案など,魅力的な研究を幅広く募集する.
コーディネータ | 清水悦幸(内田洋行),高橋 純(富山大学), 中川一史(放送大学) |
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初等中等教育における学校現場では,補正予算等でICT機器の導入といったインフラ整備が進んでおり,児童生徒の学力向上や教員の指導力向上のために日常的にICTを活用することが求められている.そのために,ICTを活用した授業デザイン,教室のICT学習環境の構築・運用方法,校内や教育委員会等における教員研修,ICT活用を支援する人的環境とその体制,役割等を明らかにしていく必要がある.そこで,本セッションでは,上記のような初等中等教育におけるICT活用の話題について,同様の問題を抱える実践者に役立つ知見としてまとめられた実践事例,理論や制度などについての発表を幅広く募集する.
コーディネータ | 小川賀代(日本女子大学),永田智子(兵庫教育大学) |
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学士力の評価や習得能力の可視化など,多様な分野においてeポートフォリオの導入が始まっている.昨年度の全国大会において課題研究として初めてeポートフォリオを取り上げたところ,高等教育を中心にeポートフォリオが注目・導入されつつあることが確認できた.また,eポートフォリオの運用や継続の在り方,各機関・分野に適した活用方法について積極的な議論が行われ,高い関心があることがわかった.そこで本年度の課題研究では,学習情報の蓄積・検索・共有やリフレクション支援等に関するシステム開発および運用の在り方だけでなく,eポートフォリオの持続的な活用と普及に向けた取り組み及び成果の検証など幅広い研究の応募を期待する.また,高等教育だけでなく,初等・中等教育における研究の積極意的な応募も期待する.
コーディネータ | 石川真(上越教育大学),黒田 卓(富山大学), 椿本弥生(東京大学) |
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2008年度からファカルティ・ディベロップメント(FD)が義務化され,大学における授業改善の取り組みが数多く行われるようになってきた.国際的な高等教育の質保証に関する議論も進展しており,今後,高等教育分野やFDにおける教育工学の役割は,さらに重要になってくると考えられる.また,この数年,高等教育やFDに関する研究報告も増加しており,教育工学の立場から十分な議論が求められる時期にきていると考えられる.そこで,本研究課題では,高等教育やFDの現状について把握するとともに,実践的な取り組みについて研究発表を行う.そして,高等教育の質保証を鑑み,高等教育やFDに対して教育工学は何ができるのか,何をすべきかを議論する.
コーディネータ | 柏原昭博(電気通信大学),平嶋 宗(広島大学), 室田真男(東京工業大学) |
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教育や学習という事象に対して工学的に取り組むことの意義と,そのような取り組みをどのように評価すべきかについて本課題研究で意見交換・議論を行う.工学的に取り組む上では,対象となる事象のモデリングと,そのモデルに基づくシステマティックな設計は,極めて重要な役割を果たすものであり,このようなアプローチはその成果の説明可能性が高く,また漸進的で継続的な発展を可能とする.しかしながら,実践的な評価,特に学習効果に関する評価を求められた場合,短期間に成果をあげるのは簡単ではないともいえる.教育・学習の支援に新しい可能性をもたらす試みとして工学的な取り組みは欠かせないものであり,今後ますます奨励していくべきものである.本課題研究では,教育・学習の支援に関して工学的に取り組み,評価のあり方について論じた論文を募集する.