昨年度の大会にて実行委員会企画で実施されたワークショップは,本年度から大会企画委員会が中心となって開催します.このワークショップは,参加者が設定したテーマについてインフォーマルに語りあう場です.実践は進んでいるものの研究として認識されていない問題や,新しい情報技術の教育利用などの萌芽的な研究について議論を行っていただくことを考えております.ワークショップは主催者主導で進行していただきます.また,予稿の用意は必要ありません.なおプログラム集には,ワークショップテーマ名・主催者/共催者名・概要が掲載されます.
ワークショップ参加者は各ワークショップ会場の受付で記名をお願いします.ワークショップのみに参加者される方は大会参加費は無料です.ワークショップ会場受付で名札をお渡ししますので,自分でご記入ください.
なお,このワークショップを機に主催者と参加者との交流が促進されるよう,参加者名簿を各ワークショップ主催者にお渡しすることにしていますので,それをご承諾の上でご参加ください.
中村純子(川崎市立西生田中学校・東京学芸大学大学院博士課程)
デジタル映像教材『情報娯楽番組「ケータイ情報局!」』の批判的分析を通して,メディア・リテラシーの5つのコア・コンセプトを理解するワークショップを行う.本教材は,平成22年4月,「総務省放送分野におけるメディア・リテラシー 教育者向け情報」で公開された中学生対象のものである.5つのコア・コンセプトとは情報を批判的に分析するための観点を示すものである.これらは,オンタリオ州,西オーストラリア州の英語科,メディア・スタディーズ科のカリキュラム分析から導きだした.デジタル教材の特性を活かし,じっくりと吟味分析するワークを行う.
http://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/hoso/kyoiku.html
林向達(徳島文理大学)
電子黒板やタブレットPC,iPad等スレート型端末といった「タッチデバイス」に注目が集まり,教育利用と研究への取組みにも強い関心が寄せられています.タッチデバイスは,情報端末を敬遠していた人々の関心を強く引き寄せ,特に指で直接操作する方法などは,幼児から高齢者まで幅広い層に対して操作のしやすさをアピールしているようです.
その魅力的な可能性から,一部ではデジタル教科書教材など教育現場への導入の動きも活発化していますが,新しい技術やデバイスを採用したり,研究の対象としたりする際の課題や問題点が十分認識・共有されないまま事態が進行しがちです.こうした新しい研究対象の立ち上がりについて,進行中の事態を借りて話し合ってみたいと思います.
三嶋亜由美・川口弥生(中京大学)
私達は,協同で創作を行うグループ活動がどうしたら創発的なものになるのかという研究をしている.体験に対する個人の思いをグループ内で『共有』することが,参加者一人一人の経験や意見を活かし,活動が創発的になっていくことに繋がると考えた.しかし,体験について「その時何を感じたか」「何をどうしたかったか」といった感情や意志は言語化しにくいため人に伝わりにくく,共有することが困難である.このワークショップでは実際にグループ活動に参加してもらい,体験したことをビジュアル的に外化し,それを手掛かりに言語化することでより深い共有を行う.そして,その後のグループ活動がどのように変化するのかを参加者自身が体感し議論する.
藤本徹(産学連携推進機構)
ゲームデザインを通した学習は,デザインの過程の技法や構成方法の獲得とともに,対象とするデザインテーマへの視点を動かし,新たな気づきを得ることにつながる.ゲームデザインに焦点を当てた学習ワークショップにおいては,ゲームで取り上げる対象を構成する要素や,要素間の関係性を考えることがその活動に含まれ,対象の捉え方やインタラクションの組み立て方に工夫が求められる.また,対象に内在する面白さの要素を探索するとともに,複雑な構造を抽象化して整理する思考がデザイン過程において重要である.
本ワークショップでは,実際に大学をテーマにしたゲームデザインを体験しながら,近年海外の教育工学研究で関心を集めているシリアスゲームの考え方に触れつつ,「大学」という存在を捉え直す機会を提供する.
永井正洋・北澤武・渡辺雄貴(首都大学東京),池田輝政(名城大学),
柳浦猛(テネシー高等教育委員会),吉崎誠(国際教養大学)
大学で行われる種々の業務,教育,研究に係るデータを分析・評価すると共にフィードバックし,次段階の取り組みに役立てていく業務や研究は必須だと考えられるが,その方法や携わる人員については曖昧であり,これまで,その都度,関係し適当だと考えられる部局や部署がこれにあたってきたと考えられる.一方,米国では,このような業務・研究はIRとして位置づけられ,集中したデータ管理が行われる中で有効に機能している.
本ワークショップでは,米国大学での先行研究を報告すると共に,先駆的に取り組んでいる国内大学での実態を合わせて検討していく中で,IRの可能性と有効性を検証していくことを考えている.
手塚千尋(兵庫教育大学),曽和具之(神戸芸術工科大学),
大西景子(SODAdesign research),茂木一司(群馬大学),
柴田あすか(神戸芸術工科大学大学院),籾井雄太(神戸芸術工科大学大学院)
日本の伝統的なあそびである「かるた」は,江戸時代から現代に至るまで,遊びながら教養を身につけるための道具として使われてきた.
このワークショップでは,かるたを「絵」と「文字」で構成されるメディアとしてとらえなおし,取り札(絵)と読み札(文字)の制作を通して,体験をドキュメンテーションする.
InSEA European Congress(@Lapland University,6.21-24) では,「HappySounds」をテーマにワークショップを実施した.参加者自身をHappyにするコト・モノ・ヒトを「オノマトペ」で表す活動では,1.日常を切り取る(体験の編集),2.記録する(カルタの制作),3.かるたで遊ぶ(経験の共有)といった,リフレクションを軸とした一連の学びが展開された.
今回のワークショップでは,古くて新しい「かるた」によるリフレクティブ・ラーニングの可能性を探究したい.
新地辰朗(宮崎大学),五十嵐俊子(日野市立平山小学校),
桑崎剛(熊本市立河内中学校),西野和典(九州工業大学),
東原義訓(信州大学),樋口順子(NTT東日本)
学校でのICTを活用した授業,情報活用能力の育成のためのサポート体制として全国でICT支援員の活躍が注目され始めました.「ICT支援員のおかげで,授業でICTを活用するきっかけができた」,「機器のことなど困ったときにすぐ助けてもらえる」などの声が寄せられ,その効果が認められるようになってきました.しかし,一方では,様々な問題点も浮かび上がってきています.地域によってICT支援員の役割や体制は異なるのが実態ですが,これまで,異なる地域間での情報交換の場がありませんでした.もし,情報交換の場がもてれば,互いの良い点を知って学び合ったり,自分の仕事に自信が持てたり,悩みを相談できたりします.
本ワークショップでは,異なる地域のICT支援員が一堂に会して情報交換をする場を提供します.関連する教育委員会担当者や派遣業者の方,学校の先生,研究者の方など,ICT支援員に興味ある方々の参加も大歓迎です.
長沼 将一(青山学院大学総合研究所 eラーニング人材育成研究センター)
文字の獲得から印刷術の発達,そして近年のコンピュータやネットワークの普及を経て,「学習」ということばの意味は大きく変容している.
当初は経験から得た知識や知恵を個人が蓄積することが「学習」であったが,メディアの発生により複数人で共有すること,さらには知識や知恵の相互作用によって新たな知識を得ることが「学習」であるとみなされるようになった.
特に通信端末の発達により真にいつでもどこでも知識のアーカイブにアクセス可能となった現在においては,当初の「学習」の意義が薄れ,Wiki・(ミニ)ブログ・掲示板などに集約された知識を自分の必要な形で保管することこそが「学習」となっている現状がある.
このワークショップでは,上述した環境下での「学習」の本質について考察する.
http://elpco.a2en.aoyama.ac.jp/registration/jset26_workshop08.html
※8月3日よりアクセス可
御園真史(東京大学),柳澤昌義(東洋英和女学院大学),本田直也(大手前大学),
東郷多津(京都ノートルダム女子大学),合田美子(熊本大学)
近年,学力そのものの低下や学ぶ力の低下が各方面で指摘されている.
一方で,学力低下などはないとする主張もあり,論争になっているが,少なくとも大学では,ユニバーサル化が進み,学力・学ぶ力の低下は現実の問題といえる.そこで,多くの大学がリメディアル教育や大学初年次教育などに取り組むようになっており,教育工学が貢献できる部分も大きいと考えられるが,現状では目立った動きになっていない.
そこで,本ワークショップでは,ミニシンポジウム形式で,教育工学研究者が行っている実践の現状と抱える課題を紹介した上で,主に大学初年次学生の学力・学ぶ力の向上に教育工学の知見やリソースがどのように貢献していけるのかを参加者とともに議論する.
岡本絵莉(東京大学医科学研究所),宮野公樹(京都大学産学連携本部),
可知直芳(特定非営利活動法人KGC),山本祐輔(京都大学大学院情報学研究科),
舘野泰一(東京大学大学院学際情報学府)
大学研究室は,研究及び高等教育の場として大きな役割を果たしている.多くの分野では,大学研究室は大学教員が研究を推進し,学生が研究活動に参画する中で学ぶための重要な役割を果たしている.そのため大学研究室は,大学研究室における研究と教育,教育研究における研究と実践の関係を考える上で,示唆に富む対象である.本ワークショップでは,(1)既存の研究・実践について主催者らが発表する.そして,(2)主催者らが作成したケーススタディにもとづいて討論を行う.以上を通じて,大学研究室に関する理解を深め,研究と教育,そして研究と実践の側面から大学研究室に対してどのようなアプローチが可能なのかを考えることを目的とする.